人はなぜ、何を学ぶのか?
続いて福原氏は「人はなぜ、何を学ぶのか」という根源的な問いを掲げた。
この問いに対して、吉田松陰は「学は人たる所以を学ぶなり」と答えたという。福原氏は、この言葉に法哲学者オットー・フォン・ギールケの「人の人たる所以は、人と人との結びつきにあり」という言葉を結びつける。
「人は『人と人との結びつき』、つまり人間関係や縁を学ぶのではないか。そしてこの縁は、個人の成長や時代の変化とともに変わっていく」と福原氏。
個人の成長とともに、家族との血縁から地域のつながり、学校を通じて得る友人関係といった形で縁は広がっていく。また時代の進化とともに、インターネットを通じた縁も生まれた。現代では血縁や学縁とは異なる「デジタル縁」というものもひとつの人間関係として捉える必要がある。
さらに、人類社会の高度化が進むにつれて、学びの環境も変化している。福原氏は、現代の社会に見られる大きな変化として「資本化」「グローバル化」「デジタル化」の3つの潮流を挙げ、加えて「気候変動」「パンデミック」「セキュリティ」の3大リスクに見舞われていると指摘した。そのほかにも、急激な少子高齢化の進行や国際紛争といった問題が生まれている。

こうした社会変化において、大学での学びはどう変化するのか。コロナ禍を経て、オンライン授業や通信教育が発達し、キャンパスのない大学も増えている。
福原氏は、こうした変化の中でも、大学における学びの価値は「創造的に研究している研究者との接触」にあると述べる。特定の課題を持って研究している研究者が学生に課題を共有し、一緒に考える機会を与えるのが大学という場所だ。「通信大学でも、地方でのスクーリングや学習会を形成して、教員との交流の機会を作ることが重要だ」と語った。