
大学経営に存在する「経営」と「教学」分離の課題
大学経営は経営と教学の両輪で成り立っている。だが以前は教授会が経営・教学のどちらにおいても大きな権限を持ち、審議していた。何事も教授会に依存してしまうこの体制は問題視され、大学のガバナンス改革が進むにつれ、経営と教学の分離が進んでいった。
近年、国立大学においては「大学ガバナンス改革法」や「国立大学法人法の改正」によって学長選考の透明化が進み、経営協議会に学外の経営のプロフェッショナルが参画するようになった。
一方、私立大学においてはもともと学長が理事の一人として経営に参画し、理事会に対し責任を負うという、理事長・学長体制になっているのが基本であり、以前より経営と教学がわかりやすく分化されていた。
とはいえ、国立大学はガバナンス改革が推進されてもなお、学長が教学部門の長と経営部門の長を兼ねている状態に変わりはなかった。
そうした中、2022年の4月に長谷山氏が理事長を務める北海道国立大学機構が設立された。小樽商科大学と帯広畜産大学、北見工業大学が経営統合して法人を立ち上げたのだ。「これは言い換えれば、大学令が施行されてから約100年を経て、国立大学で経営と教学がはっきり区分された、理事長・学長体制が誕生したということ」と長谷山氏は述べる。
そして同時期には、岐阜大学と名古屋大学が統合した東海国立大学機構が設立されるなど、全国的にも複数大学で経営機能を統合し、教学と分離する動きが進んでいる。
長谷山氏いわく、複数大学の経営を統合するメリットは大きいという。そのひとつとして「自主・自立性を生かした戦略的な大学運営が可能になる」ことを挙げる。また「各大学の特色やリソースを生かし、分野融合型の教育研究の発展を目指せる」点もメリットだ。
特に、北海道国立大学機構に属する3大学は、商学・農畜産学・工学と異なる分野に強みがある。そのため同機構は「特色ある教育研究を展開してきた3大学が分野融合によって実学の地の拠点を形成する。そして産学官金連携によって、北海道の経済・産業の発展、さらには日本・世界の持続可能な社会の実現に貢献する」ことを目指している。また「経営と教学の分離と連携によって、新しいタイプの国立大学法人の経営モデルを示す」ことを目標に掲げている。