国からの「運営費交付金」は20年で1割ほどが減少
国立大学の経営において、最も大きな課題は財政面にある。国立大学は「国の教育研究水準の向上と地域への貢献」という使命のもと、学費をなるべく抑えて国の予算、つまり「運営費交付金」で基盤的経費を賄う形の財政運営の仕組みになっているのだ。
しかし近年は国の財政状況の悪化により、運営費交付金が減少している。長谷山氏はグラフを示しながら、「平成16年には1兆2000億円ほどあった運営費交付金は、令和7年にはその1割ほどが減っている」と説明した。

ほかに資金源として考えられるのは、新しい研究に対して配分される「競争的資金」を獲得することである。
しかし、こちらは時間をかけて準備して申請しても採択されるとは限らないうえに、採択されても期間が終了すれば自己資金を捻出して継続しなければならない。「大学はすぐに成果が求められる企業と違い、ある学部を作って人材を育成し、その効果がわかるのは卒業生が社会の中堅を担うようになった30年後だ」と長谷山氏。学問研究の基盤的な経費としては、もっと長期的に安定した資金源の確保が必要となる。
ところが国立大学の財務には、会計の仕組み上の大きな課題がある。それは、資本の蓄積が行われず、必要な費用を算出してそれに見合う経常収益を算出し、予算化する損益均衡が原則であることだ(注:令和4年から会計制度の上で損益均衡という概念は外されたが、国立大学法人の財務の基本構造は変わっていない)。教育研究に必要なだけの費用を国が支出するのだから、利潤の追求は想定されていない。
大雑把に言えば、一生懸命経費を節減したり、寄付金などで自己資金を獲得したりして、収支差額が出て「利益」が見られた場合でも、予算の未執行分であれば返還しなければならず、繰り越しができない。翌年度は予算が減らされることにもなりかねない。
それではひどいので、文部科学大臣が「経営努力による利益」と認定すれば繰り越せる「目的積立金」という仕組みが作られたが、現実には予算が認められなかった施設・設備の整備や経常費の不足分の補填などに充てられている。当然ながら使えば減るお金である。
要するに、国立大学法人は会計制度上、「資本を蓄積・増加させる仕組みがないため、いくら自己収益拡大の努力をしても長期的には行き詰まる構造になってしまっている」と長谷山氏は指摘する。
そこで、解決策として考えられるのが「基金を設立し、その運用の果実で教育研究に投資する発想」である。