株式会社クジラボ 代表取締役 森實泰司(もりざね だいじ)氏
株式会社リクルートで採用コンサルタント、ITベンチャーで人事責任者経験後、人事コンサルタントとして独立。現在も人事顧問に従事するなど、教員をはじめ数多くの転職者と関わる。2019年に学校法人の事業を承継し私学経営を行うかたわら、2021年に教員のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボを創業。ミッションは教育のオープン化。
月100人が訪れる、教員のキャリア相談事情
──毎月100人の先生がキャリア相談に来られるそうですが、どのような先生方が多いのでしょうか?
小学校、中学校、高校、そして特別支援学校の先生など学校種問わず多くの先生方が相談に来られています。年齢層も20代から50代と幅広く、若手教員からベテラン教員までさまざまです。特に、20代から30代の若手教員が多く、男女の割合だと女性の方が若干多くなっています。
総じて特徴的なのは「早い段階で教員になることを志し、教員以外の道を考えたことがなかった」ということ。多くの相談者が一般的な就職活動で自己分析を経験せずに、まっすぐに「教員」という道を歩んできたので、自分の価値観や強みを見つけることができず悩んでいます。だからこそ、相談に来たときには「このままでいいんだろうか?」と漠然とした不安を抱えていらっしゃるんです。
──どのような相談が多いのか、具体的に教えてください。
最も多いのは、精神的なストレスに関する悩みです。教員の業務は授業だけではなく、児童生徒や保護者、地域住民、そして同僚といった多くのステークホルダーと関わることが求められるため、構造上ストレスを受けやすい環境になっています。子ども一人ひとりに合った支援を行うため、常に神経を使う仕事です。また、保護者からの要望や指摘も多く、対応に追われることが精神的な負担になっています。
さらに、現場では長時間労働が日常化しているため、「この働き方を続けられるのか」という不安を抱く方も多くいらっしゃいます。例えば、30代で3人のお子さんを持つ女性教員は、「もっと早く帰りたい」と思いながらも、同僚の目が気になって帰れないという悩みを打ち明けてくださいました。家庭と仕事の両立に悩んでいるケースは少なくありません。
そのほかにも、公立の先生の場合には異動による環境の変化がストレスの引き金になる場合があります。「1校目と2校目の職場文化が違いすぎてついていけない」といった相談もよく頂きます。