学習者主体の学びを実現したいが……さまざまな悩み
このセッションでは、参加者が自由に感想や質問を投稿できる「Padlet」を用いた双方向コミュニケーション方式が採用されており、コーディネーターの稲垣氏にもいくつかの意見や質問が寄せられた。
そのひとつには、「子どもの学びを委ねることを『挑戦』と表現していたように、最初の一歩を踏み出すことが難しい。学習者主体の学習や自由進度学習をやるとなると、どうしても組織内から抵抗の声が上がる」という意見があった。
これに対し、稲垣氏は「自由進度学習のポイントのひとつは『子どもたちが間違いに気づいた際、教員がどう振る舞うか』ということだと思う。例えば1時間の中で修正しようとするのではなく、単元レベルで意識することによって子ども自身が気づいて修正できることもある。加えて、ある程度見守っていても修正が難しい場合は、教員のサポートも必要」と述べた。
また「教員間で(学習者主体の学びを実現する上で重要な前提である)ICTの活用について温度差がある。管理職が介入しようにもそれぞれの教員で得意不得意があり、なかなか難しいと感じる」という意見に対しては、「まず重要なのは学校全体でできる要素を見つけること。最初は授業でなく、授業外の日常や校務の中でDXを進めるとよいのでは。そこでICTやツールの使い方を知り、活用イメージが湧くケースもある」と回答した。
さらに、大学教員である稲垣氏に対しては「大学入試が変わらなければ授業も変えにくいが、入試でも学習者主体や探究型の学びを意識した作問・出題が進んでいるのか」といった質問も寄せられた。
これに対しては、「東北学院大学の総合型選抜では、高校3年間のうちもっとも響いた探究の成果を1つ選び、1ページにまとめてもらっている。高校でeポートフォリオが試行された時期もあったが、あれもこれもとすべて載せてあっても学びの深さを読み取ることは難しい。学科によって重点や方法は異なるものの、本人が探究を通して何を考え、どのような力を身につけたのかを見るため、探究の成果とともに30分の面接を課すなどしている」とした。
後編では、この後に開催された各学校のポスターセッションでの事例紹介から、主に中学校での実践事例を中心に紹介をする。