主体的な学習者になるために必要な「子どもの視点」と「教員・管理職の役割」(1)
続いて稲垣氏は「ここまで学習者主体の学びについて、いくつかの側面があることを確認した。ではそれらを実現するために必要な子どもの視点は何か、また教員はどのように関わればよいのか。そして本日のテーマである『学習者主体・学習者中心の授業観』を教員が持つため、管理職にはどのような役割が求められるのか。3人の先生に伺いたい」と問いかけた。
重要なのは「学び方を学ぶこと」
佐々木氏は「これからは小学校から社会人まで、連続的・探究的な学びが大切になるのでは」と述べた。そして「学習者に求められることは先の『学習者主体の学び』の定義とほぼ同じ」としつつ、それを支える教員の視点としては「過去の学習と他教科の学習を関連づける」「生徒が興味ある学習課題を設定する」「学習者自身に目標・目的を把握させる」「思考を見守る」「学習者の回答から授業を構成する」といった要素が重要であることを指摘。そのひとつの形態がPBL(この場合「Problem Based Learning:課題解決型学習」と「Project Based Learning:プロジェクト型学習」の2つを指す)であるとした。
さらに佐々木氏は「PBLを取り入れる目的は、知識の習得・定着や応用力の向上といった側面に加え、学習意欲やソーシャルスキル、集団活動(協働)スキルの向上などがある。だが究極の目的は『学び方を学ぶこと』だ」と語り、その手段としてICT活用の重要性を指摘した。
加えて「高校におけるICT活用は、ともすれば個別最適化という文脈でデジタルドリルなど『内向き』の学びになりがち。PBLの中で、情報の発信や調査、ほかの学校の生徒や大人とオンラインを通じて出会うといった『外向き』のICT活用をする必要がある」と、高校生ならではのICTの活用方法について意見を述べた。
最後に佐々木氏はまとめとして、児童生徒、教員、管理職に「教育行政」の視点を加えて、以下の通り提示した。
- 学習者:学びを「自分ごと」にしていくこと
- 教員:授業や業務の改善につなげるため、自らの「思考」と「試行」を積み重ね、自身も成長していくこと
- 管理職:組織全体が「学習する学校」「学習する組織」になること。そのためにビジョンを共有したり、教員の柔軟な思考をうまく活かしたりするなどして、チーム全体が学べるような仕組みにしていくこと
- 教育行政:学校の挑戦を応援し、見守ること。教育行政が求めることが学校現場にとって「縛り」にならないようにすること
これらを踏まえて、佐々木氏は「管理職はみんなが学びやすくするためにがんばらなければいけない。行政からの支援を求めるだけでなく、連携することが必要だ」と語った。