全11時間の単元で小学校を盛り上げるプロジェクションマッピング作りに挑戦
井上教諭は授業計画で以下2つのねらいを設定した。
国語
「まんがの方法」とその効果について、自分の考えを持つ。教科書に書かれている7つの漫画の表現技法について学び、その表現方法を自分の好きな漫画や友だちが選んだ漫画に書かれている表現方法と比較し、自分の考えを深めていく。
図画工作
造形遊びをする活動を通して、材料や場所、空間などの特徴をもとに造形的な活動を思いつくことや、構成したり周囲の様子を考え合わせたりしながら、どのように活動するかについて考える。
「児童にとって、自分たちが選んだ『まんがの方法』がどのような効果を示すのかを表現する手段として、プロジェクションマッピングが適している。また、作った作品をプロジェクターで映し出すことは、空間の特徴を取り入れた活動になる」と考えた井上教諭は、国語5時間、図画工作5時間に発表の1時間を加えた、全11時間の計画を立てた。
前半の5時間は国語で授業を実施。最初の授業では、まず学習のねらいを児童に伝えたうえで、「直前に6年生がScratchを使って披露したプロジェクションマッピングを例に挙げ、『自分たちもやってみたい』と思えるように工夫した」という。さらに井上教諭は、5年生はもうすぐ6年生を送り出す立場であること、そして次年度には自分たちが最高学年になるということを改めて意識させ、児童のモチベーションを高めていった。その後、学校として児童に「土小学校を盛り上げるためのデジタルイルミネーションを作ってほしい」と正式に依頼した。結果、児童はとても乗り気になり、授業に取り組んでいった。
2時間目からは「まんがの方法」にどのような表現方法があるのか、教科書や漫画からその効果を考えていく授業を進めた。そして、後半5時間の図工の授業では「図工の目的として『空間を生かす』ことをねらいとしていたので、児童は実際に校舎を歩きながら、プロジェクションマッピングの投影に適した空間を探していった」という。
そうした準備を経て、いよいよプログラマッピングを使い、プロジェクションマッピングの制作を行った。まずは「ふきだし」や「手書き文字」といった漫画の表現方法を取り入れることでどれほどの変化が生まれるかを、児童が実際に実験をして試すところからスタートした。その後、本番投影をするにあたり、実際に自分がイメージしたものを学校内の場所で映すためにはどのようにプログラミングすればよいかを考え、制作していった。
こうした授業の過程で、井上教諭が予想していなかったことが起きた。5年生の76名は、当初個別にアイデアを考えて制作しており、井上教諭も76個の作品ができあがると思っていた。しかし、児童は自然とグループになって活動を始め、結果として16組のグループが誕生した。その際、井上教諭から声をかけたわけではなく、「アイデアが似ているから、協力して面白いものを作ろうよ」といったように児童が声をかけ合い、自然とグループができあがっていったという。まさに、協働的な学びが自然に生まれる時間となっていったのだ。