Guardian(ガーディアン)は、同社が提供する児童生徒のSOSコミュニケーション支援システム「kimino micata(キミノミカタ)」について、実証実験を行った熊本県熊本市「こども相談事業」での導入が決定し、事業の本格展開を開始したことを、11月24日に発表した。グローバルなスタンダードを踏まえ、子どもの権利を守り意思を尊重した取り組みであり、200超の設問を効果的に運用する。虐待への相談対応件数をはじめ、不登校やいじめが増える中、子どもが安心して生活できる社会の実現に貢献していく。
教員の机の上にいじめ関連のアンケートが置かれていて誰もが見えてしまう状態は、英国では考えられないものだった。一方で、アンケートはいじめや虐待を発見する最も効果的なツールであることが、文部科学省の調査で明らかになっている(参照:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省初等中等教育局児童生徒課 2023年10月4日発表))。同社は教員の忙しい状況も勘案し、子どもが安心して回答できる環境づくりが必要だと考えた。
そこで、児童生徒の個人情報の保護や問題解決に取り組む教員へ伝えやすいサービスを普及しようと事業化に着手。2020年度からは、熊本市立小中高校で実証実験や実装に向けた試験を展開してきた。
その取り組みが認められ、2023年9月1日に熊本市と契約を締結。同市の「こども相談事業」に連携して取り組むことが決定し、熊本市立小中高校を対象に環境整備期間を経て運用を開始した。また「こども相談事業」への参入を踏まえ、同社は最大3カ月分無料のキャンペーンも開始。2024年度から全国の学校、団体での導入を推進していく。
「kimino micata」の特徴はおもに「三つの追求」。
1.安心して回答できる環境づくりを「追求」
アンケートは、学校や教育機関側が、「毎日」「週1回」「月に1回」の3パターンから事前に選択できる。子どもたちは、インターネットに接続できればスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどの機器で回答可能。設問数は学年によって異なる。
実施方法は2つ。1つ目は、学校内でアンケートに対応する「ミカタチーム」を編成した上で、養護教諭や教頭といった特定の教員に知らせる。たとえば担任の教員には知られたくないことがあれば、システムを通して「ミカタチーム」に直接伝えられる。その中でも特に子どもの人権を守るため、本人の同意なく第三者に情報を明かす「アウティング」に関して意識を高め、本人の了解を取ることがシステムに組み込まれている。
2つ目は、帰宅後も含め本人が安心して取り組めるときに回答できる点。助けがほしいときに押す「SOSそうだん」ボタンもあり、いつでも発信できる。そのほか、細部まで子どもの気持ちを第一に考えた設計で運用されている。
2.アンケートの内容を「追求」
アンケートの内容は、欧米で研究されてきた児童虐待などの指標・尺度を踏まえた設問と、日本でいじめアンケート用に使われている設問などを包括する。実証実験で得た現場の声を踏まえ、日本の環境に合わせて調整。4つのレベル(小学校低学年、小学校中高学年、中学生、高校生)で言葉や表現を分け、日常生活に寄り添った設問が用意されている。
必須の質問として「相談したいことがある」や「ほかの子がいじめられているところを見た」といった設問を用いる一方で、毎回違う質問が設けられているのも特徴。食事関連の質問を「1人で食べていないか」「食べたくないときがあるか」などと違う角度から尋ねる。子どもたちが飽きてしまったり無意識のうちに隠してしまったりすることがないよう多角的な分析を実現。用意されている設問は2023年9月1日時点で200項目を超える。
3.教員の使いやすさを「追求」
子どもの回答は自動集計される。わかりやすい管理画面にこだわり、緊急度の高い回答はひと目で把握できるように設定。アンケート集計にかかる教員の手間を省く。夏休み中など子どもはいつでも相談メッセージを送れるため、新学期が始まる前に生徒の兆候をつかみ、学校や関連機関が早期対応をするためのツールとして活用できる。
「kimino micata」では、申込時に初期導入環境設定費、その後システム利用料金が発生する。学校の場合は初期設定費用11万円、1人あたり月110円。規模や環境を踏まえて設定される。
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