Duolingoは、同社がアメリカとカナダで提供している、OpenAIのGPT-4を搭載した上位の購読プラン「Duolingo Max」を、年内に日本国内でリリース予定であることを、6月9日に発表した。同日、神谷町トラストタワー(東京都港区)で行われたメディア向け説明会では、同社のHead of AIであるKlinton Bicknell氏がオンラインで登壇し「Duolingo」でのAI活用シーンや開発過程などについて説明した。
「Duolingo」は「誰もが利用できる世界最高の教育を開発すること」をミッションに掲げた、オンライン言語学習プラットフォーム。基本利用料は無料で、ゲーム感覚で学習者同士が競い合いながら、英語を含む42言語を合計100種類以上のコースで学習できる。
同社は3月に、OpenAIのGPT-4を搭載した「Duolingo Max」を発表した。同サービスではDuolingoのプレミアム購読である「Super Duolingo」の全特典に加え、AIが学習者の解答に詳細な解説をする「スマート解説」と、空港やカフェなどの場面でAIキャラクターと会話練習ができる「ロールプレイ」機能を利用できる。現在はアメリカとカナダのみで提供されているが、年内に日本国内でも提供開始される予定。
メディア説明会で、Klinton氏はまず「素晴らしい教師の特徴とは?」と質問を投げかけた。Klinton氏は「素晴らしい教師には3つの特徴がある。1つ目は教材を熟知していること。次に学習者のやる気を維持できること。そして学習者の課題や心の声を理解できること」と述べた。「Duolingo」は開発過程においてAIを活用し、これら3つの特徴を適用したという。
1つ目の「教材の熟知」においては、AIと人の力をかけ合わせて教材を作成した。Klinton氏は「人間の専門家がカリキュラムを作成する。その過程においてAIを活用することで、よりスピーディーかつヒューマンエラーを最小限に抑える仕組みを実現した」と述べた。具体例として、問題の模範解答にAIを用いることで、人による主観を介入させずに正答の範囲を作成したという。
2つ目の「やる気の維持」においては、プッシュ通知にAIを活用した。通常のプッシュ通知は、同じような内容が同じようなタイミングで全員に送られる。しかし「Duolingo」のプッシュ通知は、数百あるメッセージから個々の学習者に合った的確なコンテンツを、適切なタイミングで送信する。Klinton氏は「AIのデータ分析によって、個々に最適なメッセージを最適なタイミングで送ることにより、学習者が『勉強したい』と思う確率を最大化している」と述べた。
3つ目の「課題や心の声の理解」においては「学習者が何を考えてるのか」「何に困難を感じているのか」を理解し、教材をパーソナライズするために独自のAIシステム「Birdbrain」を活用しているという。同システムは、学習者の記憶したことが「どのタイミングで半減してしまうのか」を分析して、復習するべきタイミングを見定める。これをHLR(半減期回帰)モデルという。Klinton氏は「HLRモデルの効果を検証するため、既存の機械学習モデルとABテストを行った。その結果、HLRモデルの有効性が証明された。ここから『Duolingo』の仕組みが、より学習者のやる気を維持できることが分かった」と語った。
またKlinton氏は「発達の最近接領域」という概念に言及した。これは学習者が自力で課題解決できる課題と、サポーターがいれば解決できる課題のギャップのことである。Klinton氏は「例えば問題の正解率が99%であれば簡単すぎる。逆に50%だと難しすぎて学習者はやる気を失ってしまう。つまり、その中間レベルの問題を出す必要がある。これを実現するため、われわれは『Birdbrain』を開発した。『Birdbrain』を活用することで、すべての学習者の正答率を予測し、レッスン時間を『発達の最近接領域』の問題で埋めることを目指す」と述べた。現在「Birdbrain」はバージョン2まで出ており、AIによりリアルタイムで学習状況を分析し、より効率的に学習者を支援しているという。
最後にKlinton氏は「われわれは長きにわたりOpenAIと協業し、昨年の9月にGPT-4にアクセスした。そこから、どのように『Duolingo Max』に活用するか試行錯誤を重ねてきた。現在はアメリカとカナダでの提供だが、年内には日本でもリリース予定だ。今後もAIを用いて高度な教育を拡大していき、どんな経済状況にある人でも、公平に教育を受けられるような仕組みを構築していく」と述べ、今後の展望を示した。
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