早稲田大学は、早大アントレプレナーシップセンターが支援する研究開発型スタートアップ企業であるエキュメノポリスが開発した、会話AIを使った英会話能力判定システム「LANGX Speaking」を、早大グローバルエデュケーションセンター英語科目であるTutorial Englishの英語能力判定テストとして、2023年度の新学期から導入することを3月7日に発表した。
「LANGX Speaking」は、早稲田大学がエキュメノポリスの前身となる研究開発チームと連携して、次世代英会話学習支援AIの研究開発プロジェクトとして開始され、2020年初頭の新型コロナ禍を受けてオンライン化されたTutorial English授業時の大規模な会話データを収集・分析することで研究開発を加速し、完成に至っている。
「LANGX Speaking」では、会話AIエージェント「InteLLA(インテラ:Intelligent Language Learning Assistant)」との自然な会話を通して、学習者の英会話コミュニケーション能力を判定する。「InteLLA」は、早大グリーン・コンピューティング・システム研究機構 知覚情報システム研究所の松山洋一主任研究員(当時)らの研究チームが開発したもので、対話システム技術を活用して言語学習者のレベルや理解に合わせて質問を適応的に変更するとともに、適切にサンプルを引き出し、CEFRに準拠して言語能力の効果的な評価を行う。
今回、「LANGX Speaking」が採用された早稲田大学のTutorial Englishは、英語スピーキング能力の育成に重点を置いて1グループ最大4名の少人数制で授業を行う正規英語科目。2002年の開講以来、約20年にわたって早大生の英会話力の向上の一端を担っており、毎年のべ約1万人の学生が履修する早大の看板科目の1つ。
受講前後での、学習効果測定やクラスのレベル分けを目的とした、従来のオンライン英語能力判定テスト(WeTEC)では、おもにリスニング能力と語彙・文法知識を測定対象としており、これらを基にスピーキング能力を評価してきた。同判定を「LANGX Speaking」に変更し、英語による対人コミュニケーションスキルを深く測る技術が導入されることで、会話能力をより高い精度で自動判定できるようになり、より適切なレベルでの授業履修と、さらなる学修効果向上が期待される。
「LANGX Speaking」のテスト冒頭では、「InteLLA」が受験者の緊張感を和らげるような会話をしてリラックスした雰囲気をつくった後に、受験者に複数のインタビューを行う。受験者との会話の中で、「InteLLA」は相槌を打ったり、返答を考えている間は待っていてくれたりして、受験者が応答に窮して会話が詰まった場合は別の話題に誘導し会話を展開するなど、リアルな面接に近似した体験を可能にしている。さらに、回答者の発話内容から英語のレベルを読み取って、質問の難易度も自動で調整した会話を実現し、インタビューの後半では簡単な議論対話も展開される。
「LANGX Speaking」は、「InteLLA」とのインタラクティブな会話を通して収集した発話データに基づき、語彙の豊富さ・文法的正しさ・流暢さ・発音のよさ・インタラクティブ性・一貫性という6つの側面から、受験者のスピーキング能力を自動判定する。受験者にとっては、受験を通じて自身のレベルを確認でき、英語スピーキングにおける自身の強み・弱みがわかるので、以降の英語学習に役立てられる。
今後は、早稲田大学以外の大学や、小中高校(GIGAスクール)、英会話スクールなどへの「LANGX Speaking」導入が見込まれており、教育のDX化を推進するとともに、英会話学習者の学びの効率化につながると期待されている。
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