立命館大学はatama plusとの協働により、2023年度入試からAI教材「atama+(アタマプラス)」で、各学部の学びにおいて特に重要な指定単元を学習・修得する「学部指定単元AI学習プログラム(通称:UNITE Program)」を出願要件に取り入れた総合型選抜(AO選抜入学試験)を開始。11月2日に合格者37名を発表した。本稿では12月12日に行われたプレス向け発表会で公表されたデータも交えながら、実施結果と分析内容を紹介する。
「UNITE Program」は学科試験を実施しない総合型選抜において、大学入学後の学びの質を高めるために重要な基礎学力を、科目の各単元レベルまで細分化し指定した上で、入学前にしっかり身につけてもらうことを目的としている。導入した学部は経済学部・スポーツ健康科学部・食マネジメント学部の3つで、いずれも数学的素養が重要な文理融合の学部となる。
大学進学後、各学部で特に重要な「単元」をそれぞれ指定し学習・修得することを出願要件に取り入れており、AI教材「atama+」を活用した入試は全国初となる。高校で学んできた科目等の「履修歴」ではなく、指定単元の「修得」を出願資格とすることで、受験生は学ぶ意欲さえあれば、履修歴にかかわらず誰でもチャレンジできる。
高校までの学びが大学での学びにどのように関連するのか具体的なイメージを持ち同プログラムで効果的に学び、高いモチベーションと学力をつけて入学後の学びに接続することが期待される。
同プログラムの受講者数は全国36都道府県、さらに海外から227名と、当初の期待の2倍を大きく上回る結果となった。通信制やIB校など、普通科(全日制・単位制)以外の高校種別の生徒が全体の12.8%を占めていることから、履修歴ではなく指定単元の修得を出願資格とすることで、多様な学習背景を持つ生徒に機会を提供できたと考えられる。
また、同プログラム受講者の「atama+」での学習データを分析した結果、修了者の90%は指定単元の修了まで10日以上の継続的な学習を要しており、単元ごとに実施される修得認定試験(期間内は何度でも受験可能)をすべて1回で合格した受講生はおらず、修了するために何度も取り組む必要があった。このように修了までに一定の学習を要するプログラムであったが、諦めずにチャレンジしようとする受講者の学習意欲の高さも確認できた。
なお修得認定試験では、なりすまし受験やカンニングなどの不正を防ぐため、解答時間など複数のデータから異常値を検知するほか、試験前および試験中ランダムに写真を撮影し、別人の受験を検知する仕組みが取り入れられている。
合格者のアンケート結果からは、約3分の1が学習指定科目(今回の指定科目は数学)に苦手意識を持ちながらも、当該学部で学ぶ意欲を持ちチャレンジしていることがわかった。同入試の選択理由としては「志望学部の学びに数学的素養が必要となることを知り、入学前にしっかり学べる点に魅力を感じたから」「志望学部に必要な数学の素養を知ったが、商業高校で数学を十分に学べていなかったから」などの声が上がっており、大学での学びにつながる学習への関心の高さがうかがえる。
本年度は、合格者の入学前教育においても「atama+」を活用する。さらに今回の成果を他大学に共有し、取り組みのきっかけとなった「新しい高大接続と入試の在り方を考える共同研究会」を他大学とともに発展させていく。次年度以降は、現行学部の募集枠の拡大に加え、他学部や立命館アジア太平洋大学への展開と、数学以外の教科導入の検討を進める。
発表会の中で、立命館大学の副学長である伊坂忠夫氏は「『UNITE Program』は修得主義に基づいた未来志向の入試。受験生が努力すれば平等にチャレンジ可能な取り組みとして広げていきたい。教育DXをさらに推進し、定量化・可視化された学習情報を活用しながら、新しい高校と大学の学びの接続を推し進めたい」とコメントした。
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