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学びのプロたちが語る人生100年時代の学びとは?――Learn for Life 2018レポート

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2018/05/28 14:00

 人生100年時代と言われるが、100年となると学び、キャリア、大きく言えば生き方がそのものがこれまでとは変わってくる。3月末、都内で開催された「Learn for Life 2018 第1回東京国際教育祭」で、人生100年時代の学びをテーマに、楽天の常務執行役員でチーフピープルオフィサーを務める小林正忠氏、子ども向けバイリンガル教育を展開するSelanの代表取締役 樋口亜希氏、青山学院大学で社会人向け履修証明プログラム「ワークショップデザイナー育成プログラム」の講師を務める苅宿俊文氏(青山学院大学 社会情報学部 社会情報学科教授)の3氏が話した。

生きる力――人生を1.1で過ごすか0.9で過ごすか

楽天株式会社 チーフピープルオフィサー 常務執行役員 小林正忠氏
楽天株式会社 チーフピープルオフィサー 常務執行役員 小林正忠氏

 最初に登壇した楽天の小林氏は、三木谷浩史氏と楽天を共同設立した人物だ。チーフピープルオフィサーとして、次々と入ってくる社員に語り続けていることは「生き方改革」だという。「1回しかない人生、人に仕えることではなく、”私のこと”をやった方が人生は豊かになる。”私ごと”が”志ごと”になればすてきだなと思う」と志の大切さを取り上げた。

 小林氏が考える「生きる力」とは何か? 小林氏は今後5~10年にかけて重要になるものとして「自己効力感」「多様性との共存」「コミュニケーション力」の3つを挙げた。

 例えば自己効力感については、「日本はもっと自分を認める力、信じる力をつけた方がいいのでは」と小林氏。多様性との共存については、「他者を認める力、他者を受け入れる力」と言い換える。楽天で東京勤務の社員は8000~9000人、国籍は77に及ぶという。ダイバーシティーというと女性活用が連想されるが、楽天では障害を持つ人の雇用も積極的に行っているという。「この障害があってもこんな役割はできる」と小林氏は考え方を説明しながら、「多様性の中で働くとはどういうことかを模索している」と述べた。3つ目のコミュニケーション力については、「他者の考えを聞く」と「他者に考えを伝える」の両方が必要だという。

 上記の3つに加えて、「夢を持つ力」「視座を変える」なども「生きる力」に挙げたが、中でも「1.1の生き方」はわかりやすい。やればできる、今日はいける、勝てる、未来は明るいなどの考え方が「1.1」であり、対極として今日は忙しいからやめておこう、どうせやっても無理、負けるなどの「0.9」の生き方がある。小林氏によると、人の生き方は1.1か0.9か、ふた通りしかないという。1日だと差は0.2だが、1週間、1カ月、1年と時間がたつと差は開く。楽天での役割は「1.1の生き方をする人を増やすこと」と小林氏は述べた。

 小林氏が最後に挙げたのが、「挑戦する力」だ。楽天が、インターネットショッピングから金融、プロ野球、世界展開とさまざまな挑戦をしてきたことを振り返りながら、「自我作古」という言葉を紹介した。自我作古とは「我より古(いにしえ)を作(な)す」、つまり自分が歴史を作るという精神だ。挑戦にあたってまずやり始める力が必要だが、小林氏はやり続ける力、そしてやりきる力の3つがそろえば成功するとも述べた。

 「大人になっても生きる力は養わなければならないし、人生100年時代にはその力がもっと大切になってくる」と小林氏、「究極のところ生きる力があれば人は幸せになれる」と続ける。

 政府から民間まで働き方改革で持ちきりだが、小林氏は「働き方に制限されず、人生という観点で捉えるべきだ。生きるという力を養うために”働く”を定義した方が良いのでは」と述べた。

クリエイティビティがあればAIは怖くない?

株式会社Selan 代表取締役 樋口亜希氏
株式会社Selan 代表取締役 樋口亜希氏

 幼少から学生までの間に中国、日本、米国で過ごした経験を持つ樋口氏は、「日本の教育現場は、このままでは危ない」と危機感を抱き自ら学校を立ち上げた。

 日本に危機を感じる理由として、「1人の先生につき30~40人の学生がおり、生徒は質問をせず、発言が少ない」と樋口氏、自身が中国で通った大学では、先生が質問がある人と尋ねると、半分以上が手を上げるという。「世界にはハングリーにクリエイティビティを生かして戦っている学生がいる」と樋口氏。世界経済フォーラムのレポートでも、クリエイティビティは今後必要なスキルの上位に入っているという。

 クリエイティビティをどうやって教えるか――「多角的な視点」「考える力」の2つがキーになる、と樋口氏は言う。その2つを養うにためのリベラルアーツ、つまり教養教育を早期から行うべきだ、と提案した。「教養を軸にたくさんの思考の軸を持つ。そうすると、物事のつながりや意味を見いだせるようになる。その結果、自分なりの考えや価値を導き出せる」と樋口氏は述べた。

 人口、技術の進化などでこれから社会は大きく変わると予想される。2030年までに労働人口の49%がロボットに代替されるといった調査を紹介しながら、これを「ネガティブなこととは思わない」と樋口氏。「単純作業をAIに任せ、人間はよりクリエイティブなことに時間を割ける。自分の頭でクリエイティブに考えられる人が、より豊かな人生を送ることができる」と述べた。


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著者プロフィール

  • 末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

    フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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