魅力ある町の子どもたち
北海道の東、世界自然遺産である知床半島に位置する羅臼町には魅力がたくさんあります。羅臼町ではこれまで「総合的な学習の時間」の中で地域について学んでいました。それに加え、令和2年度からは「教育課程特例校制度」を利用して「知床学」と位置づけ、基幹産業である漁業や豊かな自然といった、ふるさとの魅力について学習しています。
ふるさとについて学ぶ上で、学習したことへの発信は必要不可欠です。しかしコロナ禍により、例年行っていた発表の機会が失われる事態が続きました。令和2年度は札幌や東京に出向き、学習成果を大勢の人の前で発表する予定でしたが、すべて中止せざるを得ませんでした。
そこで私はインターネット上で発表できる場を探し始めました。1人1台端末の活用方法について模索している時期でもあり、学習したことを発信する際の活用に効果があると考えたのです。そして、令和3年度に担任していた6年生で「Instagram」のアカウントを作成することを決め、SNSを活用して発信する活動を始めました。
数あるSNSで、なぜInstagramなのか?
これだけさまざまなSNSが普及する中、子どもたちのSNSトラブルも必然的に増えています。親の世代からしてみれば、まったく新たな価値観に対して指導するのは難しいはずです。子どもたちがSNSを使うことに対しても肯定的な意見は多くありません。そこで、SNSに対する正しい向き合い方についても、この活動で学ぶべきだと考えました。
学びを発信することも目的ですが、学習のテーマは「地域の魅力発信」です。近年、旅行先での食事や観光スポットなどをInstagramで検索する人が増えています。発信した内容に対して現実的なフィードバックを感じやすいのはInstagramで、自分たちがおすすめしたことに対する「行ってみたい」「食べました」などのリアクションが、子どもたちの意欲を上げると考えました。
Instagramの投稿には写真が必須です。魅力が伝わるような写真の撮り方や、写真を補足できるような文章の書き方、コメントに対する返信など、考える場面がたくさんあるInstagramが、今回の活動のねらいを達成するため、最も向いているのではないかと考えました。
始めるまでの道のり──リスクをどう考えるか
もちろん、活動を容易に始められたわけではありません。目的と計画を管理職に相談し、教育委員会に許可をもらい、子どもたちと方向性を話し合うなど準備には時間を要しました。年度当初から検討を開始し、実際に取り組みを始められたのは6月からでした。
また、GIGAスクール構想で1人1台配付されたタブレットは、自由にアプリを入れられる環境になかったので、学年に1台、別途配付されていた校内のタブレットを使用しました。
取り組みの流れとしては、子どもたちが自分で写真を撮り、文章をまとめて共有のタブレットで投稿するというものです。投稿時は担任がチェックを行い、担任の責任で投稿する形をとりました。徐々に注目される中で、心無い反応を頂くことも予想していたので、子どもたちにリスクを背負わせないことを前提に活動を進めていきました。実際には、応援のメッセージばかりでしたので、支えられているという実感を持ちながら活動することができました。