岐阜大学、名古屋大学を設置する東海国立大学機構と、ドワンゴ・KADOKAWAは、デジタルテクノロジーを活用した大学運営に関する新サービスの開発と事業化に向けた包括的提携協定を締結したことを、7月22日に発表した。両者は、東海国立大学機構が掲げる「デジタルユニバーシティ構想」に基づき、高校生を中心とした次世代へのSTEAM教育や、社会人を中心とした専門性の高いリカレント教育の展開を中心に、大学機能の拡大に共同で取り組んでいく。
今回の合意に基づき、東海国立大学機構が注力している社会課題解決のための最先端の研究を中心とした講義コンテンツを、ドワンゴとKADOKAWAが運営支援しているN・S高等学校の生徒をはじめ広く社会に提供する。先端技術の意義や重要性をリアルに感じてもらうことにより、学習意欲の向上を図り、将来のイノベーションエコシステムを支える人材を育成する。
一方で社会人向けには、動画配信事業に取り組んできたドワンゴが、東海国立大学機構が取り組んでいる社会人向けのデータサイエンティスト教育を支援する。そして、オンラインを活用したリカレント教育の効率的・効果的な運営方法を共同開発し、他大学や教育機関に利活用してもらうように提供していく。
国立大学法人として日本初の2大学からなる東海国立大学機構は、2大学の法人統合を機に「デジタル技術を活用し、学生・教員だけでなく社会のさまざまな人々に、大学が持つ知とネットワークを提供することを目指す『デジタルユニバーシティ構想』」を推進しており、新たな大学サービスの創出に向けて、企業等との協業を検討してきた。
一方ドワンゴは、2006年より「ニコニコ動画」で動画コンテンツの配信およびユーザーコミュニティの醸成を事業として行ってきた。同社開発のネットを活用した教育コンテンツ配信プラットフォーム「N予備校」などの教育分野でも、動画・ライブ配信およびコミュニティ醸成の活用実績を重ねながら、配信技術・ノウハウをさらに拡張していく機会を検討していた。
これらの背景から「デジタルユニバーシティ構想の推進」と「教育現場で動画配信サービスのさらなる利用機会の拡大」を目的に、それぞれが持つ機会・経験を組み合わせることにより、新たな教育サービスの開発が可能との結論に達した。
包括的提携における具体的な取り組みは以下の通り。
東海国立大学機構が持つ教育コンテンツの「N予備校」での配信
大学院学生・社会人対象の「実践データサイエンティスト育成プログラム」をはじめとする正課外の教育コンテンツを、N・S高生や一般の人も利用する教育コンテンツ配信プラットフォーム「N予備校」で配信する。このプログラムは、企業等から提供されるデータを用いて、実社会の課題をグループワークで解決する「実世界データ演習」を核としている。
専門性の高い教育コンテンツに適した新動画配信プラットフォームの共同開発
ドワンゴのこれまでのコンテンツ配信事業経験を、名古屋大学が提供している「実践データサイエンティスト育成プログラム」で活用すべく検討を開始する。高い専門性を有する教育分野での利用に機能やUX(ユーザーエクスペリエンス)を最適化させ、将来的には他大学・他の教育機関への提供を目指す。
デジタルテクノロジーを活用した大学運営の研究
ドワンゴがN・S高等学校で培った、デジタルテクノロジーをフルに活用した学校運営のノウハウと、国内初の複数大学による大学法人である東海国立大学機構が持つ大学運営のノウハウをあわせ、大学運営の新たなデジタルプラットフォームの研究開発を行うとともに、他大学等への展開を検討する。
7月22日に行われた記者会見で、東海国立大学機構の機構長である松尾清一氏は「今回の提携によって、両者が持つ強みを生かしながら、社会が求める次世代人材の育成を目指したいと考えている。取り組みの成果を次世代教育の新たな形として発信し、広く社会に広めていきたい」とコメントした。
また、ドワンゴ 代表取締役社長 兼 KADOKAWA 代表取締役社長の夏野剛氏は「ドワンゴは、日本最大の高校であるN高等学校を運営しており、S高等学校とあわせて約2万2000人の生徒がオンラインで学んでいる。取り組みを5年続けた結果、オンラインの教育環境がリアルと比べても遜色ないことが証明されたと感じている。今回機会を頂き、これまで私たちが取り組めていなかった大学教育でもオンラインの学びを展開していけることに感謝している」と述べた。
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