みんなのコードは、宮城教育大附属小と共同で実施している、「コンピュータサイエンス(CS)教育」授業の実践・研究・カリキュラム開発を行う実証研究プロジェクトに関する、2021年度の報告書を4月14日に発表した。
同報告書は、今後議論が始まる次期学習指導要領へも寄与できるよう、小学校段階からコンピュータサイエンスを扱う価値と具体的な授業事例をまとめたもので、実証研究の実施にあたっては、日本財団から「公教育におけるプログラミング教育必修化の定着と発展をとおした地域格差の是正」プロジェクトとして助成を受けている。
同実証研究の2年目である2021年度は、宮城教育大附属小内の組織体制の充実を図り、年3回の全体会およびコンピュータサイエンス研究全体会を開催した。研究全体会では、白鴎大学教育学部の教授である上野耕史氏に話を聞く機会を設け、提案授業を基にコンピュータサイエンス科で育てる資質・能力について学校内で深く話し合うことができた。また、各学年とも年間10時間のコンピュータサイエンスの授業を実施し、2020年度に実施した授業のアップデートに加えて、2021年度は新たな実践内容を追加している。
2年生の「つながるコンピュータ」では、2020年度の実践を再考して新しいチャレンジを行い、新たに校内の無線LANのつながりやすさを調査する活動を設定、その後の学習の中で子どもがアクセスポイントの存在に自然に目を向け、ネットワークのつながりについて気づく姿がみられた。
4年生の「入力した情報のゆくえ」では、インターネット上で入力した情報がその後どのように扱われるのかを体験的に捉える教材を使って授業を行った。「言われたとおりに入力する」という行動から何が個人情報に当たるのかを考え、本当に入力してよいのか立ち止まって考えたりすることを学んでいる。
6年生の「AIってなんだろう」では、身近にあるテクノロジーの仕組みを学び、それを通してコンピュータのよさを実感し、コンピュータをどのような場面で生かすことができるかを学んだ。授業の後には学校内でどんな問題があるかを自ら考え、AIを使ったプログラミングを図書室の整理で生かせないか、学んだことを主体的に試そうとする姿もみられている。
授業終了後、同校の児童に対してコンピュータの学習が大人になったときに役立つと思うかを尋ねたところ、8割超の児童が「役立つ」と回答した。とりわけ、5年生では97%に達している。
2020年度の実践前には、6割の児童がパソコンやタブレット端末を使うことを「楽しい」と感じていたが、授業の中で頻繁にパソコンやタブレット端末を使用することで、2021年度の終わりには「楽しい」が8割超になった。
教員に対して、教員間でICTの活用スキルの格差が生じていると思うかを尋ねた質問では、同実証に取り組む前は「格差があると思う」とする回答が54%だったのに対して、2021年度の終わりでは26%に減少している。
2022年度は、より多くの人に小学校段階からコンピュータサイエンスを扱う価値と具体的な授業事例を伝えるべく、年3回実施する全体会の内容を他校へ展開し、コンピュータサイエンス研究会を広く公開することを予定する。また、より効果的な学習が推進できるよう、コンピュータサイエンス教材の研究協力を進め、授業での使用を通して検証・改善を図っていくとともに、これまで各学年で10時間実施していたコンピュータサイエンスの時間を20時間に増やし、学習内容の充実を図り、系統的なつながりを意識して指導していく。
さらに、新しい試みとして小学校でのコンピュータサイエンス科での学びと、中学校での技術・家庭科(技術分野)内容「D 情報の技術」を中心とした学びがスムーズに接続する指導のあり方を追究。それぞれの学校段階における実践内容を共有する機会を設定し、小中9年間が一体となった学びを視野に入れた取り組みを進める。
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア