算数・理科以外の教科でもプログラミングを取り入れたいが……
文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」では、プログラミングに関する学習活動の分類の一例が示されており、現場でもそれに沿ってプログラミング教育が行われている。中でも「A分類:学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの」は、限られた授業時間の中でもプログラミングを取り入れやすく、多くの教員がこのA分類で実施している。
一方で「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」のA分類の項目では5年生の算数「正多角形と円」と6年生の「電気の利用」の2つの例のみが示されており、プログラミング教材もこの2つの単元での活用を前提としているケースが多い。そのため、ほかの教科や単元へ発展させたいが、どのように行えばいいのかわからず、悩んでいる先生もいらっしゃるのではないだろうか。
そのような方々に向けて、今回は「地図」をテーマにしたプログラミング教材「まなっぷ」を紹介する。
地図メーカーが手掛けるプログラミング教材「まなっぷ」
大手地図メーカーであるゼンリンが提供するまなっぷは、オリジナル地図を作りながらプログラミング的思考を身につけられる教材だ。社会科や総合的な学習の時間など、地図と関連するさまざまな教科・単元で活用可能で、授業準備の手間を軽減できる学習指導案も付属しているため、すぐに授業が始められる。
学習指導計画案が付属する単元
社会科
- 3年生:火事からまちを守る
- 4年生:わたしたちの都道府県
- 5年生:くらしを支える食糧生産
- 6年生:私たちの暮らしを支える政治
算数
- 6年生:およその面積
総合的な学習の時間
- みんながくらしやすい町
- 登下校安全マップづくり
- 水害に備える
- プログラミングを体験しよう はじめてのまなっぷ
- プログラミングを体験しよう オリジナルマップを作ろう
- プログラミングを体験しよう 町をしょうかいしよう
道徳
- 話そう、探そう、ボランティア活動
※これらの単元以外にも、地図を利用するさまざまな単元で活用可能。
単元の内容に沿った学習の中でプログラミング教育を行うことができ、学んだことを地図に落とし込むことで地域への理解を深められる。子どもたちが親しみやすいブロックプログラミングを採用しているため、指導の負担も少ない。
具体的には本物の地図上に、実際に歩いた道に線を引く、撮影した写真や動画を表示させる、任意のエリアに色をつけるなど、プログラミングによって地図上にさまざまな表現を行うことができる。また、指示通りにキャラクターを動かす定番のプログラミングも地図上で行うことが可能だ。
さらに、初めてプログラミングの授業を実施される先生に向けて、まなっぷの基本操作を動画で学べるチュートリアル機能も搭載。児童も先生も動画を見ながら操作することで、効率的に操作方法を習得することができる。
地図は「通常地図」「白地図」「航空写真」「等高線地図」の4種類が使用でき、実際の地図記号も使用可能。すべての地図や完成した作品は印刷も可能で、フィールドワーク等の準備が軽減される。地図メーカーであるゼンリンが手掛けた教材ならではの特徴と言える。
従来の紙地図を用いた授業ではグループワークが中心で、児童の取り組みに姿勢に差が生じてしまっていたが、1人1台端末を活用すれば個人ワークも可能で、宿題やオンライン学習で活用することもできる。一方で、それぞれの児童が作成した地図データは共有できるため、児童同士の学び合いも容易に行うことが可能だ。もちろん、地図の印刷の手間や経年劣化がないといったデジタル教材ならではのメリットもある。なお、まなっぷはWebブラウザから端末・OSを問わずに使用可能だ。
登録初年度は無料で利用可能
まなっぷは2021年3月より提供が開始され、現在多くの教育機関で活用されている。2022年度より登録初年度は無料で利用でき、先述のチュートリアル機能や先生・児童1人につき1IDが付与されるなど、さまざまな機能がバージョンアップされ、教育現場でより使いやすくなった。
では、まなっぷを使うと実際にどのような授業が行えるのだろうか。ここからは、北九州市立門司海青小学校の授業実践を紹介する。
地域の文化財や行事を紹介する単元での活用
北九州市立門司海青小学校の末次吉彰先生は、4年生の社会科の授業でまなっぷを活用。「Fukuoka Go To ツアー ~福岡県の文化財や祭りを見に行こう~」という単元名で、総時数8時間で実施した。福岡県の文化財や祭りについて調べ、その後地域ごとにグループに分かれて地図上をキャラクターが動く「Fukuoka Go To ツアー」をプログラミングで表現するという内容だ。
単元の目標
県内の伝統や文化について、歴史的背景や現在に至る経過、保存や継承のための取組などに着目して、見学・調査したり地図などの資料で調べたりして、年表などにまとめ、県内の文化財や年中行事の様子を捉え、人々の願いや努力を考え、表現する。このことを通して、県内の文化財や年中行事は、地域の人々が受け継いできたことや、それらには地域の発展など人々の様々な願いが込められていることを理解できるようにする。また、主体的に学習の問題を解決しようとする態度や、地域社会に対する誇りと愛情、地域社会の一員としての自覚を養う。
本単元におけるプログラミング教育のねらい
地図上を移動するキャラクターを自分たちが意図する動きに近付くように試行錯誤する活動を通して、「プログラミング的思考」を育成する。
リアルな地図で教科の学びをさらに深められる
もともと昨年度よりロボット教材を使用し、社会科で「地図×プログラミング」の授業を行っていたという末次先生。自作した紙の地図上でロボットを動かすプログラミングに子どもたちは熱心に取り組み、地図とプログラミングの親和性の高さに気づいた一方で「本物の地図でこのようなことができれば、教科のめあてともっとうまく結びつけられるのでは」と感じていた。その後、まなっぷと出会い今回の授業実施に至った。
授業を通して、末次先生は改めて「デジタル教材ならではのよさ」を強く実感したという。
「紙の地図の場合、子どもたちは一生懸命鉛筆で書きこみ、色を塗って完成させるのですが、書き直すことは難しいため発表後はそこで終わりになってしまうことがほとんどでした。まなっぷなら簡単に修正できるので、ほかの児童のアドバイスをすぐに取り入れてさらによいものにするなど、活発な学び合いが実現しました」
さらに、動かすキャラクターを「区のキャラクターにしたい」といった意見が上がったり、本物の地図上をキャラクターが動くことで行ったことのない街との距離感を実感しやすくなったりと、教科の学びをより深めることができたという。
そして「プログラミングを教科の学びに取り入れる際は、プログラミング自体が目標になってしまうのではなく、めあてを達成する手段として有効的に活用すべき」ということを前提とした上で、次のように述べた。
「これからの教育では、デジタル教材を用いることによってゲーム感覚で楽しみながら勉強することが必ず必要になるはずです。デジタル教材は子どもたちのやる気を引き出しやすく、より主体的に学ぶ姿を見ることができました。ちょっとの工夫で、勉強が苦手だったり、積極的になれなかったりする子どももどんどん楽しめるのではないかと可能性を感じています。子どもたち一人ひとりが輝ける場所を増やせるため、デジタル教材やプログラミング教育には期待しています」
まなっぷについても「ほかの小学校の先生におすすめしたい」と話していた末次先生。先述の通り、幼稚園および小中学校、教育委員会であれば登録初年度は無料で利用することができる。さまざまな教科で活用できるまなっぷを、ぜひ授業に取り入れてみてはいかがだろうか。