オランダでは全体の4分の1を占める──日本との最大の違いは実習の多さ
ウェビナーはフィンランド在住の田中潤子氏が、オランダと日本を加えた3か国の教員養成課程の違いを知ることを目的に、「フィンランドとオランダの『教員養成課程』を知り『学び』のあり方を対話する会」として開催した。教員の中でも小学校教員にフォーカスしている。
フィンランドについては田中氏、オランダについては現地のNHL Stenden University of Applied Sciences(応用科学大学)でインターナショナルスクール教員養成過程に在籍した吉田由里香氏が紹介した。また、都留文科大学 文学部 国際教育学科で准教授を務める山辺恵理子氏も日本の最新の動きについて話をした。
日本の教員養成課程がフィンランドとオランダのそれと大きく異なる点は、実習にあるようだ。
例えばフィンランドでは学士3年と修士2年を経なければならないが、実習は5年の間に3~5回。期間にして合計6~7か月という。実習はトレーニング専門のTeacher Training Schoolで行われる。田中氏が事情をよく知るフィンランド・オウル大学の場合、付属校のようなイメージで大学のすぐ横にあり、そこで実習を行うという。その学校に通っているのは地元の子どもたちだが、そこにはトレーニングを専門とする教員がいるそうだ。
オランダでも実習は多く、「教員養成カリキュラム全体のうち約4分の1を実習が占める」と吉田氏。吉田氏の学校では、最初の教育実習は入学して3か月目だったと振り返る。1年4学期制で、1年生の場合は1学期(9~11月)の後3週間の1回目の教育実習が行われ、2学期(12~1月)の後に2回目の教育実習(期間は3週間)が行われるというスケジュールだ。2年生になると教育実習は3か月、3~4年になると期間はさらに増えて4か月程度だという。なお、オランダは教員養成課程で日本と同じ学士の修了を求めており、期間は4年間。オランダの高等教育は応用科学大学(University of Applied Sciences、オランダ語でHBOと呼ばれる)と研究大学(University, オランダ語でWO)があるが、教員養成課程のある応用科学大学は、研究大学がアカデミックな学び中心であるのに対し、より実践的な学びにフォーカスしているのだそうだ。この点は、「教員養成課程で研究能力の養成にも重点が置かれているフィンランドとは違うかもしれない」と吉田氏は比較した。
では実習の内容はどのようなものか?
フィンランドでは、1年目は観察期間という。期間は1週間から10日間で、「自分が先生になったらどんなふうに教えるのかのイメージを持つため、実際に小学校で先生がどのように子どもと関わっているのかなどを見る」と田中氏。実際に授業をするのは2年目以降となる。2年目は約2か月の実習をし、3年目は教育関連機関で約2か月間、インターンをする。最後に修士課程の2年のうちで約2か月間、学校で実習をするという流れだそうだ。
オランダでも初回の実習は観察中心だったが、その中でもレッスンプランを作成して実施したり、小さなグループを自律的に教えることも求められたという。「(教員養成課程に)入学して3か月目で実習に出されるというのは、確かに大変」と吉田氏、だが「授業で学んだことが実際の教育現場でどう生かせるのかを知る機会となり、モチベーション向上につながった」と述べた。3~4年生になると、授業だけでなく朝の会から帰りまでを担当するなど、ほぼ担任に近い役割を任されるのだという。この意図について吉田氏は、「クラスを一定期間持てるかどうかという実習。そのため、実際の担任は主にオブザーバーとして観察してフィードバックをくれる役割に徹する事が多い」と説明した。
そのようなことから、吉田氏はオランダ教員養成の特徴を一言で表すと「Learning by doing」と表現した。