新型コロナウイルスの影響で中退者は前年の1.8倍に
文部科学省が2021年に行った中退に関する調査によると、新型コロナウイルスの影響で国公私立の大学や短大、高等専門学校を中退した学生は701人で、前年同時期より316人増え、1.8倍になっています(調査期間2021年4~8月。2021年11月19日公表)。
このような状況下で、大学関係者から聞かれる、ほとんどの大学に共通する中退関連の悩みは、以下のようなものです。
- 正しい中退防止の方法がわからない。
- 自分の大学のやり方でよいのかわからないため、他大学の実例を知りたい。
- 授業はオンライン化したが、学生の生活サポートまではオンライン化できていない。
- 学生から悩みがたくさん寄せられるが、人員が足りず対応しきれない。
- 学生が何に困っているのか、大学として何に注力して支援をすればよいのかわからない。
大学側もオンライン環境の整備やレクリエーション活動への参加の促進、SNSなどでの情報発信などさまざまな取り組みを実施していますが、まだまだ模索中の段階です。
なぜ中退してしまうのか? 中退者の実情
効果的な中退防止の取り組みを行うためには、中退する理由など、中退者の実情を知ることが大切です。ここでは、ジェイックが中退者・中退予定者を対象に行ったアンケートの結果を紹介します。
まず中退理由で最も多いのは「留年したから」で、以下「授業内容に興味が持てなかったから」「授業についていけなかったから」「経済的事情・家庭問題」と続きます。
直接的な理由が「留年したから」で、間接的な理由(留年した理由)が「授業に興味を持てず出席しなかったから」「授業についていけず単位がとれなかったから」という学生も多いようです。
また、大学への進学理由としては「なんとなく・親や先生に言われて・進学するのが当たり前だと思った」という、自発的ではない理由が1位にきています。実際、私も中退者と話していると、大学に行く目的・目標がなかった学生が多いと感じます。
奨学金を借りている方も約半数います。授業とアルバイトの両立がうまくいかず体調を崩したり、勉学がおろそかになって留年し、奨学金が止まったりするなど、負のサイクルに陥る方も多くいます。
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株式会社ジェイック「中退者、中退予定者アンケート」
- 調査期間:2021年4月1日~9月30日
- 回答者数:263名
基本的なことではありますが、大学は入学時に勉学とアルバイトを両立できる計画を立てられるように情報を学生に伝え、さらに授業に出席していない学生に対しては定期的に連絡し、適切なコミュニケーションをとることができれば、中退は減ると考えられます。
例えば、単位取得状況が芳しくない学生への個別面談や保護者の方への相談、大学で学ぶ意味を考えるための機会づくり、休学者・留年者が授業に参加しやすい空気づくりなど、さまざまな取り組みが考えられます。実際に、何度も根気強く、対象者に相談に来るよう呼び掛けている大学もあるようです。
中退した学生と接していると、中退したことを後悔している方がほとんどです。「親に申し訳なかった」と泣きながら伝えてくれる方もいますし、周囲への劣等感をずっと抱え続ける方も多くいます。
大学が積極的に学生と関わり、中退を防止できるような環境をつくることが重要です。