変異株が学校現場に与える影響
令和3年6月下旬から、1日の新型コロナウイルス新規感染者数の7日間平均が増え続けており、東京都には7月12日から、そして沖縄県には5月23日から引き続き、緊急事態宣言が出ています。8月31日現在、全国的に我が国は感染第5波にあり、ピークもいまだみえていません。
第5波の特徴として、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)により、子どもも感染しやすいことが指摘されています。夏休みが終わり、学校活動がこれから本格化する中、学校に感染が持ち込まれ、校内で拡大するリスクが高いという前提で対処する必要があります。また、子どもを介して学校から家庭にウイルスが広がった場合、まだワクチン接種が済んでいない世代の親が重症化するリスクや、親が立場の弱い非正規雇用の場合は契約を更新されないなど、仕事を失うことにつながってしまう可能性もあります。約60%が共働き世帯(国勢調査より)である我が国では、学級閉鎖や休校により共働き家庭などが休みを取らざるを得なくなり、企業活動に支障をきたす可能性も指摘されています。
学級閉鎖が児童・生徒に与える影響
学校現場における感染対策は、学級閉鎖や休校が最も大がかりな介入となります。2020年3月9日から2020年5月7日までの間に、米国では学校閉鎖が新型コロナウルスの発生率・死亡率の減少と関連していました(※1)。8月27日、文部科学省では、厚生労働省と協議のうえ初めて学級閉鎖の具体的な判断基準を作成しました。そのなかでは、同じ学級の中で複数の児童や生徒の感染が判明した場合や、感染者が1人でも、複数がかぜなどの症状を訴えていたり、複数の濃厚接触者がいたりするなど学級内で感染が広がるおそれが高い場合に、学級閉鎖の実施を検討するとしています。
一方で子どもの大事な人生の機会、学びの場の確保も併せて考えながら進めていかなければなりません。また、子どものインターネット依存やゲーム障害など新たな問題が浮上してきています(※2)。休校が子どもに与える影響を検討した報告では、西アフリカではエボラ出血熱流行下での学校閉鎖の後、児童労働、ネグレクト、性的虐待、思春期の妊娠の割合が急増し、多くの子どもたちが学校に戻ることはなかったとされています(※3)。このようにさまざまな影響を子どもに与えうる学級閉鎖や休校なので、学校現場では感染対策と子どもたちの学びの両立を図ろうと苦心しています。
参考文献
- (※1) Auger, K. A., et aL:Association between state- wide school closure and COVID-19 incidence and mortality in the US、 JAMA,324;859-870,2020.
- (※2) Han, D. H., Yoo, M.. Renshaw, P. E, et al.:A cohort study of patients seeking Internet gaming disorder treatment, J. Behav. Addict. , 7:930-938、 2018.
- (※3) The Lancet Child Adolescent I.lealth:Pandelnic school closures:risks and opportunities. The Lancet Child&Adolescent Health,4;341,2020.