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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用

GIGAスクール端末を「学習者主体」で活用すべき3つの理由とは?

GIGAスクール構想で実現する「学習者主体」のICT活用 第1回


 全国に1人1台の教育用コンピューター(以下、端末と記載します)とネットワークが配備される「GIGAスクール構想」が、2021年度より次のフェーズに入ります。端末配備やネットワーク構築を終え、いよいよこれから授業や行事など、学校生活における「活用」と、その端末の維持管理や状況に応じた設定変更などの「運用」が始まるのです。本連載(全4回)では、この「GIGAスクール構想」で実現した環境を、できるだけ「学習者」つまり児童生徒の視点で活用していく意義について述べていきたいと思います。1回目となる今回は、なぜ「学習者主体」で活用することを推奨するのか、その背景を3つの理由からお話しします。

「学習者主体」でのICT活用とはどのような状況なのか

 まず、どのような状態であれば「学習者主体でのICT活用ができている」と言えるのかを、筆者の考えとして以下に示します。

  1. 端末を学校生活(授業中、クラブや部活、係・委員会・生徒会活動、自宅での宿題・課題)の中で、どのようなときにどのようなソフトを使って活用するかを、児童生徒がある程度自由に決めることができる。
  2. 端末の利用ルールを、学級・学年・学校ごとに児童生徒が主体となって決めることができる。
  3. 新たなアプリやソフトウェアの導入を、児童や生徒が教職員を通じて提案することができる。
  4. 学習上の支障(フィルタリングや機能制限が厳しすぎて学習に影響がある等)の改善を、提案することができる。
  5. そのほか、端末に関する約束事を児童生徒が自分たちで定め、また変えることができる。

 大まかにこのような状態が実現できると、児童生徒も先生も、お互いの信頼関係の上で端末を利用することになるので、安定的な運用ができるようになります。これらは多くの先進校、かつ積極的に端末が活用されている学校で共通して見られる要素です。

 ただ、一読してこれを「理想論」と感じる方も多いでしょう。先進校においても先述の状況が一足飛びで実現したわけではなく、管理職や先生、児童生徒とのさまざまなやりとりを経て、たどり着いたケースがほとんどです。ですが、もし1~5の状況とそれぞれ「真逆」の状況が続くと、さまざまな課題が生まれます。そこで「学習者主体」での活用が教育委員会や学校にとってもメリットになることを、次の3つの観点で示したいと思います。

【観点1】大人たちよりも児童生徒のほうが端末の扱いに詳しい

 仮に、1や2の逆で、活用シーンや利用ルールを学校や教育委員会が「全部決める」となると、導入されている端末の機能や導入されているソフトの使い方、どのようなことができるか、不適切な利用が考えられる機能はどこにあるかといったことをすべてを把握しておき「あらゆる児童生徒の操作を想定して、先回りしてルールを定める」ことが必要になります。しかも、端末のOSやソフトは定期的にアップデートされていくので、それを常に追いかけ続けることは、本職のITエンジニアですら苦労していることです。数多くの校務分掌を抱えている現場の先生にそうした対応を求めることには、そもそも無理があります。

 何よりも、児童生徒のほうが端末の扱いに慣れていたり、そもそも苦手意識がないのでどんどん試したりして、試行錯誤の中で自然と使い方を身につけていきます。教科の指導内容や生活・進路指導など、先生が圧倒的な経験・知識を持つ領域と異なり、ICTに関しては児童生徒のほうが経験豊富な可能性もあるのです。

 そのため、思い切って先生は「児童生徒のICTスキルに良い意味で頼る」ことをお勧めします。操作スキルに長けている児童生徒に「授業の前までにエジプトのカイロの地図を表示しておいてくれる?」と、苦手な操作はお願いしてしまう。こうすれば、自分の操作や知識・経験が足りなくても、助けてくれた児童生徒を承認しつつ、授業など進行への影響は少ないでしょう。早い段階で「先生はICTについては完璧じゃないし、みんなの助けを借りたい」という協調の姿勢を示すほうが、心理的な負担も少なく、児童生徒との信頼関係の構築にもつながります。

次のページ
【観点2】理由が説明できない制限や禁止が重なると、端末の故障率が上がる

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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