プログラミング教育と世界のCS教育――本連載の概要
はじめまして。私はKing's College London(キングス・カレッジ・ロンドン)の修士課程において、Computing in Educationというプログラムでコンピュータサイエンス教育(CS教育)に関する研究を行っている、鵜飼と申します。本題に入る前に、筆者の経歴をご紹介させていただければと思います。
私は2017年7月までの4年強の間、Microsoftにおいてグローバルな製品開発チームのプログラムマネージャーとして働き、OfficeやMinecraft Educationのチームで、Office LensやMinecraft: Education Editionをはじめとした製品の開発に携わってきました。そんな中、2016年末、アメリカでCS教育を推進するCode.orgと共同で、プログラミングチュートリアル「Minecraft Hour of Code Designer」を開発した経験を通して、体系的にCS教育を学びたいという思いが強くなり、留学に至りました。
学生時代は水泳の授業を支援するロボットについて研究し、その成果を元に、情報処理推進機構が実施する、IT分野で優れた若手を育成する事業「未踏IT人材発掘育成事業」のスーパークリエータに認定されました。現在は、17歳以下のクリエータ及びプログラマを支援するプロジェクト「未踏ジュニア」をリードしたりもしています。
さて、日本でも2020年より小学校から高校までプログラミング教育が順次必修化されることが決定しました。ここ最近では、実際の授業開始までの限られた期間の中で、少しでも良い形で子どもたちが学べるようにと、さまざまな動きが見られます。プログラミング教育必修化の枠組み、及びその経緯については既に多くの記事がありますので本稿では説明を省きますが、必修化を実現するにあたって大きな原動力の1つとなったのは、諸外国、特にイングランド※における動きだと言われています。イングランドでは2014年9月より、それまで必修だったコンピュータの操作スキルやアプリケーションの使い方に主軸を置いた教科「ICT」に替えて、コンピュータサイエンスを中心にした教科「コンピューティング」が必修化されました。またイングランド以外の数多くの国でも、コンピュータサイエンスを必修化しようとする動きが広まっています。
この不定期連載「グロプロ~世界におけるプログラミング教育と、その可能性~」では、現在ロンドンでCS教育に関する研究に携わり、それ以前はエンジニアとしてCS教育に関するグローバルな製品開発にも携わった筆者の視点から、プログラミング教育必修化に向けて少しでもためになる情報をお届けできればと思っております。
※筆者注:「イギリスでは、」と表記しなかったのは、イギリスにおける教育システムは地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)によって異なっているからです。