はじめに
第4回は、実際の生徒たちによる授業動画の活用状況についてお話しします。2017年12月に授業の撮影とGoogleドライブへの動画アップを始めて以来、生徒たちが活用する幅が少しずつ広がっていきました。今回は2018年度からの活用と2019年度以降の新たな活用についてお伝えします。それではどうぞよろしくお願いいたします。
連載の流れ
- 第1回:Googleドライブの基礎知識
- 第2回:具体的なノウハウ(前半)
- 第3回:具体的なノウハウ(後半)
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第4回:生徒たちの活用状況(前半)
- (1)2018年度から現在に至るまでの活用
- (2)2019年度以降の新たな活用
- 第5回:生徒たちの活用状況(後半)と今後の展望
2018年度から現在に至るまでの活用
(1)体調不良等で欠席した授業を後でそのまま視聴
体調不良等で学校を休んだ生徒たちが、そのときの授業を後でそのまま視聴しています。
2018年4月から、私はG Suite for Educationを活用してすべての授業動画をGoogleドライブにアップする取り組みを始めましたが、これにより生徒たちは欠席しても後でそのままその授業を視聴できるようになりました。校内で視聴するときは、生徒たちは学校にあるChromebookを使って早朝の時間帯や放課後に視聴しています。校外では、現在約7割の生徒がスマホで、それ以外の生徒たちはiPadもしくはパソコンで視聴しています。
こうして生徒たちは授業をそのまま視聴できるようになりましたが、私は欠席した生徒たちに「後で動画を見ておいてね」とは言っていません。欠席したときの授業内容をどうクリアするかは生徒それぞれでやり方が違いますので、私は動画視聴を強制することはせず、生徒たちが選択肢の一つとして授業動画を利用できる環境だけを整えています。
実情としては、ほとんどすべての生徒が、欠席したときは自分の判断でそのときの授業動画を視聴しています。
(2)学習内容を振り返る際、自分のペースで授業を見直す
生徒たちは学習内容を振り返る際に、自分のペースで必要に応じて授業を見直しています。
私は、世界史であれば、高校2年生以降の生徒たちには1カ月に一度のペースで下図のような学習計画表を配布し、これまで学習した範囲の復習を各自で行ってもらっています。その際、生徒たちは自分が苦手な範囲や、プリントを見直しただけでは内容が思い出せない範囲を中心に、各自で自由に授業動画を視聴しています。
ちなみに、本校には幅広い学力層の生徒が在籍していますが、その中には勉強が得意ではない生徒や、どうしたら勉強ができるようになるのかがわからずに悩んでいる生徒たちが少なからずいます。そのような中で、私の授業を受けている生徒たちはいつも熱心に、意欲的に学習を進めています。
その要因の一つとして考えられるのが、Googleドライブでの動画視聴を活用した学習内容の意味の理解です。一般的に、学習が苦手な生徒は、自分がわからない内容や、授業中はわかったもののその後わからなくなってしまった内容はそのまま放置します。そして、定期考査の前になると、そのテストをクリアするためだけにわからないまま暗記に走り、その場しのぎをします。そこでは生徒たちはほとんど何も習得しておらず、しかしながら定期考査をクリアしたという成功体験だけは残るので、この後同じことを繰り返してしまいます。その結果、最終的にはわからないことだらけになり、いつまでたっても勉強が苦手な状態から抜け出せなくなってしまいます。
しかし、私の授業を受けている生徒たちは、自分がわからない内容については、Googleドライブから何度でも授業動画を見直すことができます。自分の理解のペースに応じて一時停止しながら見直すことも可能です。そうやって意味を把握して理解すると、わかることが楽しくなり、学習に対して意欲的になっていきます。
これは、特に勉強が苦手な生徒たちにとっては、前に踏み出す際の重要な一歩となります。この歩みを日々積み重ねていく中で、生徒たちは次第に思考の仕方を身につけ、安易な暗記に頼らずに学習を進めることができるようになり、やがてそれは他の教科でも応用できるようになっていきます。
教育現場において、生徒一人ひとりがきちんと意味を理解して学習を進めていける環境を整えることは何よりもまず大切なことですが、実際のところそれを実現するのは大変難しく、多くの先生方がどうすればいいのか日々悩んでおられるかと思います。私の場合はその環境を、Googleドライブでの動画視聴を生徒たちの学習ツールの一つとして自由に使ってもらうという形で整備しています。