7割の子どもがストレスを感じているが、対する大人も余裕のない状況
国立成育医療研究センターが今年6〜7月にかけて行った調査によると、約7割の子どもが「コロナのことを考えると嫌になる」「最近集中できない」といった、何らかのストレス反応を示した。「おとなたちに言いたいこと・つたえたいことがあれば、教えてください」という設問には、新型コロナウイルスへの不安や、以前のように友だちと遊べない寂しさのほか、「子どもの話を聴いてほしい」「学校の感染対策なども大人が全部決めるのではなく、子どもの意見を取り入れてほしい」といった訴えが寄せられている。
こんな時こそ、周りの大人が子どもとじっくり向き合って気持ちのケアをする必要があるはずだが、コロナ禍で大人も余裕がないのが現状だ。
ここ数年、学校の先生たちの働きすぎが問題になっている。平成28年の調査によると、小学校教諭の学内総勤務時間は週に57時間29分。さらに自宅に持ち帰っての業務が平日は1日29分、土日は1日1時間8分とある。1日8時間が正規の勤務時間として、ひと月に80時間程度の超過勤務をしていることになる。
それに加えて今は、子どもたちの健康状態の把握、手洗い指導、校内設備の消毒、感染リスクが高い教科活動や部活動についての検討や代替手段の準備――こういった新たな業務が発生している。その上、臨時休校で生じた遅れを取り戻すべく1日の授業時間数を増やしたり夏休みを大幅に短縮したりして授業を行っているのだから、文字通り休む暇がない。子どもたち一人ひとりと向き合う余裕が欠けた状況であることは、想像に難くない。
例年通りの夏休みを実施した学校も
このような状況下でも、子ども一人ひとりをよく見て、それぞれの子どもなりの学びや成長のサポートをしていこうという考え方を実践している学校がある。長野県の佐久穂町に2019年に開校した私立「大日向小学校」だ。
全国の多くの学校と同じく同校も今年3月から臨時休校に入り、新年度はオンライン学習という形でスタートした。5月後半から分散登校を行い、通常の登校が開始されたのはようやく6月半ばになってからだ。しかし、授業時間を増やしたり夏休みを短縮したりといった措置は取られていない。
実は筆者は小学校一年生の子どもをこの学校に通わせる保護者の一人で、子どもたちが夏休みをたっぷりと満喫し、2学期に入ってからも教科の勉強に限定されない活動を楽しむ様子を身近に目にしている。なぜ、このようなことが可能なのか? 本記事では一保護者としての視点も交えながら、大日向小学校が大切にしている考え方と、その実践方法をお伝えしたい。