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Withコロナの時代にアップデートを迫られる教育現場と教師たち〜広尾学園が実践するオンライン授業の成果と将来展望

「paizaラーニング 学校フリーパス」導入事例レポート:広尾学園中学校・高等学校 (後編)

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2020/06/25 07:00

 ITエンジニア・プログラマのための求職・学習サイト「paiza(パイザ)」。33万人が利用するこのサイトでは、求職者と求める企業のミスマッチを防ぐためのスキルチェックとともにWebブラウザ上で動画を見てすぐにプログラミングできる学習の仕組み「paizaラーニング」を提供。1200を超える動画と約1400問の演習問題を、ユーザーあたり月額980円(税別)の購読料で配信している。paizaラーニングには教育機関向けに無償で提供される「学校フリーパス」のメニューがあり、先日これを積極的に活用している広尾学園中学校・高等学校の榎本裕介教諭と、paiza株式会社の片山良平氏による対談を実施。前編ではプログラミング学習やオンライン授業のメリットやデメリットをお伝えした。後編となる本稿では、新型コロナウイルスの影響で浮き彫りになった現在の教育現場の問題と将来像についてお届けする。

新型コロナウイルスの影響で、丸暗記の試験がなくなった

片山:新型コロナウイルスの影響で、休校を余儀なくされ、授業料の返還が求められる教育機関もあります。平時でのオンライン授業への対応など、広尾学園中学校・高等学校様においても、自粛期間が終わったあと、これまでと違う形での授業を提供される計画はありますでしょうか。まず、オンライン授業を実施してみた榎本教諭の個人的な感想からお聞かせください。

paiza株式会社 代表取締役社長/CEO 片山良平(かたやま・りょうへい)氏
paiza株式会社 代表取締役社長/CEO 片山良平(かたやま・りょうへい)氏

榎本:個人的には、通勤時間がなくなった以外は何も変わっていません。自身の環境としては良くなっています。しかし、私はオンライン授業について他の教員に研修して教える立場でしたので、この研修は苦労しました。ITがあまり得意ではない教員も多いので、まる1日かけて研修を行ったのです。しかもそれで終わりではなく、何か新しい仕組みを導入する際はその都度研修が必要となるでしょう。

広尾学園中学校・高等学校 教諭(理科・情報) 榎本裕介(えのもと・ゆうすけ)氏
広尾学園中学校・高等学校 教諭(理科・情報) 榎本裕介(えのもと・ゆうすけ)氏

片山:生徒さんへの説明もありますよね。

榎本:生徒向けの導入は、一部の生徒が解説サイトを作るなどしてくれましたのであまり問題はありませんでした。生徒への研修は生徒に任せたのです。

片山:それはすごいですね。何か新しい制度などはありますか?

榎本:定期テストが変わりました。自宅で試験を受けることも想定して、丸暗記ではなくすごく考えさせる試験になりました。家にいて何かを参照できるというのが前提となるので、無駄な暗記から解放された本質的な教育になったと言えるのではないでしょうか。また、オンライン授業をやってみてすごくよかった点が、チャットです。生徒の意見がどんどん出てくるのです。

片山:分かります。私も会社の全体会に対するフィードバックを社員からチャットで募って返答しています。

榎本:対面の授業だと、授業の流れを遮ってしまってはと、生徒は意見をするのをためらいます。オンラインではチャットで積極的に意見を出してほしいと指導しました。チャットならいつでも意見を表明できますし、騒がしくもないです。とにかく反応がよくて、まるでゲームの実況動画を見ているオーディエンスのようです。対面授業になってもチャットは導入していきたいと思いました。他校の先生が、私たちの双方向授業についてよく見学にいらっしゃるのですが、みなさん「チャットの勢いすごいですね」とおっしゃいます。

双方向のオンライン授業により、教師の本質的な役割が問われるように

片山:双方向での授業は、他校の先生にも評価されているのでしょうか。

榎本:はい。先生が話すだけの一方通行の授業はあまり意味がないと思います。中学1年の生徒が、他校に通う友達が、動画を見るだけの授業を受けているという話を聞いたことを話題にして「動画だったら授業の意味がないですよね?」と言っていました。しっかり学ぶ気になれば、そこに気がつくわけです。

片山:双方向のオンライン授業は、生徒からもよい評価を得ているのですね。

榎本:生徒にアンケートをとったら、7割以上が双方向の授業がいいと回答しています。1割程度、自宅のネット回線が良好でない生徒については、あとから見られる動画がいいという意見もあります。学校としては、出願の段階でオンラインなので、ご家庭にネット回線があるというのが前提のようになっています。今回の自粛期間では長時間の通信に耐えられる回線環境をご用意いただく要請もしました。

片山:ネット回線の整備は、ご家庭の事情もあるので難しい部分かとは思います。

榎本:はい。もう一つの問題は、教師のほうも、オンラインでの双方向授業をできるようにならないといけないことです。先生のほうが準備できていないという問題ですね。極端な話、PDFの資料をメールで送って終わりという先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

片山:教師にもファシリテーションの能力が問われるようになっているのでしょうか。

榎本:ファシリテーション能力は重要です。一方通行の授業なら、教師でなくてもできます。このことに社会全体が気づいて大きな流れが起きようとしています。オンラインで双方向の授業をやって、そのあと登校するようになったとしても双方向性は求められるでしょう。理想の学校像が変わっていくのです。本来そうあるべきであると言われていましたが、現場がなかなか変われなかったのです。今回の自粛要請によって先生にもICTへの理解が進み、教育現場を変えるきっかけになったと言えます。

オンライン授業でpaizaラーニングを活用している様子(再掲)
オンライン授業でpaizaラーニングを活用している様子(再掲)

片山:榎本教諭のまわりの先生たちにも変化が訪れているのでしょうか。

榎本:教師のなかには、50分の授業に対して40枚ものスライドを作って、深夜まで準備をしているという人もいらっしゃいます。そもそも生徒との対話を想定しておらず、「時間が余ってしまう」などの理由から、大量の資料を用意しているのです。「生徒からの意見を求めると、授業が進まない」という先生もいます。私はどんどん意見が出るほうがいいと思っています。反転学習になれば、授業自体が効率化されます。時間がないといいながら、教師に目を向けさせるために、本来の授業とは関係ない雑談をする教師もいます。真面目に授業を考えれば、やるべき姿は自ずと決まってくると思います。


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著者プロフィール

  • 片山 良平(paiza株式会社)(カタヤマ リョウヘイ)

    paiza株式会社 代表取締役社長/CEO インターネット黎明期より100を超える企業のWebデザイン、システム開発などに携わる。その後、ITエンジニアとしてPHPとMySQLを使用したCMS、ASP型ECモールなどの自社開発を担当。2007年より、ネットイヤーグループ株式会社にて大手通信企業のデ...

  • 森 英信(モリ ヒデノブ)

    スマホアプリやWebサイト、出版物といったコンテンツの企画制作を手がける株式会社アンジーの代表。写真加工アプリ「MyHeartCamera」「PicoSweet」など、提供するアプリは1100万以上のインストールを獲得。2019年にはAR(拡張現実)プログラムに関する特許を取得。自身はIT関連の取材...

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