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自ら試行錯誤する学びの体験をオンライン授業でも~広尾学園が実践するプログラミング学習で得られた効果とは

「paizaラーニング 学校フリーパス」導入事例レポート:広尾学園中学校・高等学校 (前編)

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2020/06/24 07:00

 33万人が利用するITエンジニア・プログラマ専門の総合求職・学習サイト「paiza(パイザ)」。2013年に転職向けのサービスとしてスタートしたpaizaはその後、Webブラウザ上で動画を見てすぐにプログラミングできるような学習の仕組み「paizaラーニング」を提供するようになる。現在は1200を超える動画と、約1400問の演習問題があり、毎月25程度の問題が追加されている。ユーザーあたり月額980円(税別)から利用できるサービスであるものの、教育機関向けには全講座を無償で提供する「学校フリーパス」のメニューもある。今回、このサービスを実際の授業に採用している広尾学園中学校・高等学校の榎本裕介教諭と、paiza株式会社の片山良平氏の対談の様子を前後編の2回に分けてお届けする。前編では、導入のきっかけや授業内容、効果など、リアルな教育現場での活用方法についてきいた。

Webブラウザだけで学習できる手軽さがきっかけ

片山:paizaは、スキル重視でITエンジニアの転職・就職・学習を支援するサービスです。採用の際には、求職者と企業とがミスマッチとならぬよう「スキルチェック」の仕組みを提供しています。また、プログラミングの学習では、環境構築でつまずいてしまう面がありましたので、Webブラウザ上で動画を見てすぐにコードを書いて実行できる仕組み「paizaラーニング」を用意しました。学校の先生から申請があれば無料でご利用いただけるメニューもあり、今回、それを利用されている広尾学園中学校・高等学校の榎本教諭に、実際の活用内容についてお聞きしたいと考えています。まずは榎本先生についてお教えください。

paiza株式会社 代表取締役社長/CEO 片山良平(かたやま・りょうへい)氏
paiza株式会社 代表取締役社長/CEO 片山良平(かたやま・りょうへい)氏

榎本:私は理科が専門で、教師になる前は大学で研究者をしていました。2011年、広尾学園で、サイエンスを志す生徒のために博士研究員によるティーム・ティーチング(数名の教員が協力しながら指導する授業の方式)をしてほしいとのリクエストをいただき、情報の授業において、科学者が活用する情報科学の授業を始めました。その傍ら、夜間の大学で理科の教員免許を取得して2013年からは理科教諭としても教鞭をとってきました。もともと自分自身でもプログラミングはしたいと思っていたので、2019年に大学に願書を出して、情報の教員免許をとり、2020年からは理科以外に情報の授業も担当しています。

広尾学園中学校・高等学校 教諭(理科・情報) 榎本裕介(えのもと・ゆうすけ)氏
広尾学園中学校・高等学校 教諭(理科・情報) 榎本裕介(えのもと・ゆうすけ)氏

片山:先生は、paizaラーニングについてはご存知だったのでしょうか?

榎本:同じく情報の授業を担当する教員から聞きました。彼は非常勤でSEの仕事をする傍ら、本校での教員も行っています。本校では、本科コース、医進・サイエンスコース、インターナショナルコースがあり、まずは医進・サイエンスコースの生徒向けにpaizaラーニングでのプログラミング授業を始めることにしました。いろいろ教材をさがしていたのですが、どれも生徒がついていけないようなものが多かったです。paizaラーニングを自分でさわってみて「これは生徒でもできる」と手応えを感じました。

片山:paizaラーニングのどのような点を評価して、授業に活用できると思われましたか?

榎本:私も生徒もゲームが大好きなのですが、paizaラーニングのスキルチェックの仕組みが魅力的です。生徒たちも同じようにスキルチェックをよいと感じています。paizaラーニングの授業は今年2年目なのですが、1年目は私も授業と同じペースで学んでいました。同僚の教員が出す課題を生徒といっしょにチャレンジしていたのです。

片山:教員が複数名いらっしゃるとはいえ、ご自身で学びながらの授業は大変だったのではと想像します。

榎本:最初に動画で知識説明を行えるので、その点は楽です。私は学生時代、先生の板書を書き写して話をきくだけ、という授業をあまり効率的だとは思っていませんでした。最初に動画を見る反転学習であれば、分からないとことは繰り返し見て、スキップしてもいいし効率が良いと思っています。paizaラーニングにはすでにたくさんの教材があるので、ぜひ使わせてもらおうと始めたのです。

先生に言われたことに忠実な生徒は足踏みしてしまう

片山:paizaラーニング教材を使った授業はどのように進行されているのでしょう?

榎本:2週間ごとに予習しておく範囲を決めて、動画で学習しておいてもらいます。それで授業ではいきなり演習問題を出して、そのトラブルシューティングがメインとなります。現在(2020年5月取材時点)は新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン授業となっていますが、教室で行う場合は、できる生徒にはクラス内を見回って、分からない生徒のドラブルシューティングを行ってもらうようにしていました。できる生徒とそうでない生徒の格差はあります。

片山:できる生徒さんと、そうでない方の割合はどのくらいなのでしょうか。

榎本:高校2年生の場合、40名のクラスなのですが、そのうち2〜3名はほうっておいても上位レベルまで進んでいきます。一方、あまり理解が進まない生徒は4〜5名ほどいます。おもしろいのが、ふだん先生のいうことを真面目にノートにとっている生徒ほど、理解が進まない場合が多いという点です。試験直前になって「ifってなんですか?」と基本的な質問をしてくる生徒もいます。先生に言われたことをやるのが得意な反面、試行錯誤を迫られるプログラミングの課題については、そもそも何を質問していいか分からない生徒がいることが分かりました。

片山:できる生徒さんはどんどん演習問題をクリアしていくのでしょうか。

榎本:はい。paizaラーニングでは、例えばPythonの入門編を習得すれば、あとは自分で調べてどんどん進められるようになっています。スキルチェックが楽しくてどんどん進めていくのです。もはや情報の授業を受けなくていいレベルまで到達している生徒もいますね。そこまでくると、演習ではなくて数学や物理など、自分の研究に応用する形でプログラミングを役立てています。

paizaラーニングのランク(左下)と、課題一覧(右上)
paizaラーニングのランク(左下)と、課題一覧(右上)

片山:分からない生徒に教えることでまた理解を深めることもあると思います。

榎本:できる生徒は積極的に教えています。教えるという行為自体、しっかり知識を体系化する必要があるので大変ですが、それがまた生徒たちの学びになっています。

片山:分からない生徒さんを伸ばしていくにはどうしたらいいのでしょうか。

榎本:うまくステップアップできない生徒を見ていると、コードを書いて「実行していいですか?」とわざわざ尋ねてくることがあります。「まず試そう」とならずに、足踏みしているのです。私は、自分で試行錯誤をしてみようと何度も伝えるようになりました。プログラミングは、いちいち先生に聞かなくてもコンピューターが実行して応えてくれます。日本の教育はこれまで、先生がいうことを忠実に実行することをやりすぎてきたのではないかと思います。


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著者プロフィール

  • 片山 良平(paiza株式会社)(カタヤマ リョウヘイ)

    paiza株式会社 代表取締役社長/CEO インターネット黎明期より100を超える企業のWebデザイン、システム開発などに携わる。その後、ITエンジニアとしてPHPとMySQLを使用したCMS、ASP型ECモールなどの自社開発を担当。2007年より、ネットイヤーグループ株式会社にて大手通信企業のデ...

  • 森 英信(モリ ヒデノブ)

    スマホアプリやWebサイト、出版物といったコンテンツの企画制作を手がける株式会社アンジーの代表。写真加工アプリ「MyHeartCamera」「PicoSweet」など、提供するアプリは1100万以上のインストールを獲得。2019年にはAR(拡張現実)プログラムに関する特許を取得。自身はIT関連の取材...

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