他者との協力や、エンジニアリング・プロセスも評価の対象
VEXの教材と競技大会は、年齢によって内容が分かれている。今回取材した大会では、小中学生向けの「VEX IQチャレンジ(以下VIQC) 」と中高生向けの「VEX ロボティクス・コンペティション(以下VRC)」の2つが同時に行われた。
VIQCでは、スナップ・オン式のロボットを用い、他チームと協力する「チームワーク・チャレンジ」、ドライビングとプログラミングでロボットの性能を競う「スキルスチャレンジ」がメインとなる。一方、VRCでは「VEX V5」という、より高度なモデルのロボットを使って、他チームと協力し他の合同チームとポイントを奪い合う「アライアンスマッチ」と、「スキルスチャレンジ」で点数を競う。
VIQCもVRCも、ランダムに他のチーム(時には他国のチーム)と組み、その場で会話し作戦を立てて試合に挑むのが、一般的なロボコンとしては珍しい特徴だ。
加えて、ロボットの設計・検証の過程をまとめたノートに対する評価、各チームへのインタビューによるチームワークの評価も重要になってくる。ロボットの性能だけではなく、どのようにプロジェクトを達成したかの過程や姿勢も評価されるということだ。
毎年4月開催の、世界の頂点を決める「ワールド・チャンピオンシップ」でも、各国の代表チームがロボットの性能だけでなく、テーマに沿ったプロジェクト実行の力や、チームワークなどのソーシャルスキルが評価される。
「大人は入れない」フィールド
試合のフィールドは4つあり、陸上競技大会のように同時に各フィールドで予選が進んでいく。VIQCのチームワーク・チャレンジ、スキルスチャレンジのフィールドと、VRCのアライアンスマッチ、スキルスチャレンジのフィールドの4つだ。加えてVIQCとVRCにそれぞれに1つずつ、練習フィールドが用意されていた。
計6つのフィールドと、チームの待機場所には、指導者や保護者は入ることができない。
保護者や先生は、観客として外から声援を送り、盛り上げる様子が印象的だった。
チームの作戦力が光る「スキルスチャレンジ」
試合が始まると、4つのフィールドでそれぞれに白熱した戦いが繰り広げられた。
VIQCもVRCも、それぞれのスキルスチャレンジでは、「ドライビング」と「プログラミング」の2種目を3回行い、ぞれぞれの最高得点の合計点を競う。フィールドにあるオブジェクトを得点エリアに置くことで点数が加算される。
VIQCの方では、コントローラーでロボットを操作する「ドライビング」は制限時間60秒間。「プログラミング」では、コントローラーを使わず、プログラミング制御のみで得点を獲得する。こちらも制限時間は60秒間。
優勝は、ハワイのSacred Hearts AcademyのLancer Roboticsチームが勝ち取った。
一方VRCの方のスキルスチャレンジは、より複雑な配点となっている。キューブを高さのあるタワーに置くことで1点獲得できる。さらにコーナーの得点エリアに積み上げられたキューブの数でも得点を稼ぐことができるが、タワーに同じ色のキューブを入れた場合、そのキューブは2点となる。
どの色のキューブを積むか、作戦はチームごとに少しずつ異なるわけだ。VRCのスキルスチャレンジの優勝は、アメリカ カリフォルニアから参加したDublin Robotics ClubのDublin Robotics Chargersチームが勝ち取った。