東京急行電鉄、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、GMOインターネット、ミクシィ、渋谷区教育委員会は、「プログラミング教育事業に関する協定」を6月17日に締結。「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」として推進していくことを発表した。本稿では同日に実施された記者発表会の模様をお伝えする。
本プロジェクトは渋谷区立の小・中学校でのプログラミング教育の充実を図り、次世代に必要な資質・能力を持った人材を渋谷から輩出する土台作りを進めることを目的に進められる。記者発表会ではまず、東京急行電鉄(以下、東急電鉄)の石川あゆみ氏が本プロジェクトの概要を説明した。
石川氏は、本プロジェクトを「渋谷から日本の未来を育てるプロジェクト」とし、IT人材の育成が急務であることや、小・中学校にてプログラミング教育が必修化となる一方で、教育現場では「指導員不足」「授業時間数の確保」「指導方法や教材」などの課題が山積していることに言及した。
そうした状況の中、渋谷区は区立の小・中学校の全児童・生徒約8500人に対し、1人1台セルラーモデルのタブレットを配布するなど、積極的に教育の情報化に取り組んできた。しかし、プログラミング教育に関しては「26校中2校で研究に取り組んでいるほか、一部の学校で授業を行っているのみで、まだまだ十分とは言えない」と、渋谷区教育委員会 教育長 豊岡弘敏氏は話す。
一方、渋谷に拠点を構えるIT企業である、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)、GMOインターネット、ミクシィも、それぞれIT教育に取り組んできた背景を持つ。それらの企業と東急電鉄、渋谷区教育委員会が連携し、「渋谷の強みを集結」させたプログラミング教育事業の実現に向けて、本プロジェクトが開始されることとなった。
協定にあたり、東急電鉄は行政や教育機関、IT企業をつなぐハブとしての機能を、渋谷区教育委員会はカリキュラム開発などでの教育上の助言と学校との橋渡しを、IT企業各社は最先端のITスキルや教育のノウハウの提供と、それぞれ役割を分担しながら継続的な教育モデルを作り上げていく。そして、渋谷から世界で活躍する人材の育成を目指すという。
東急電鉄 取締役社長の高橋和夫氏は「渋谷らしい多様性と創造性のもと、官民が連携して他に類のない取り組みができると期待している。この取り組みの裾野が広がり、日本全体のプログラミング教育を牽引できれば」と語った。
なお、プロジェクトで実施する具体的な内容としては「カリキュラム開発」「教員研修」「授業支援」「ワークショップ・イベント開催」「キャリア教育」があり、カリキュラムについては各社がそれぞれのノウハウを生かして開発。具体的には、小学校低学年向けをDeNAが、小学校高学年向けをサイバーエージェントとGMOインターネット、中学生向けをミクシィが担当する。
サイバーエージェントは、子会社であるCA Tech Kidsのノウハウを生かして、カリキュラムの開発と授業支援を実施する。また、主催するプログミラングコンテスト「Tech Kids Grand Prix 2019」において無料のワークショップを開催し、渋谷区の小学生の参加を推進する。
同社 代表取締役社長の藤田晋氏は「渋谷は日本で一番IT企業が集まっている場所。ここを中心に新しい才能を育てていく試みにはとても期待している」とコメントした。
2014年よりCSRとしてプログラミング教育を実施しているDeNA。同社が開発した小学生向けの学習アプリ「プログラミングゼミ」は渋谷区立の小学校に配布された全タブレットに搭載されており、今回の取り組みでも同アプリを活用したカリキュラム開発と授業支援が実施される。
同社 代表取締役会長の南場智子氏は「コンピューターに命令できる力があるかどうかで、子どもたちの将来に大きな差が出てしまう」とプログラミング教育の重要性を説いた。
GMOインターネットのグループ企業であるGMOメディアは、プログラミング教育のメディア「コエテコ」を運営しており、本プロジェクトの取り組みもそこから発信される。また、同社の新卒向け教育プログラムである「GMOテクノロジーブートキャンプ」を小学校高学年向けにアレンジし、インターネットのインフラ領域に関するカリキュラム開発と授業支援を行う。
「今後はすべての会社がインターネットテクノロジーを活用する企業になる」と語るのは、同社 代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏。「これからの時代の主役は今の子どもたち。グループをあげて貢献していきたい」と続けた。
「次世代の育成」として中高生向けに企業訪問プログラム「XFLAGアカデミー」を実施するミクシィは、キャリア教育やITデジタル分野に対する知見を生かし、プログラミングに関する啓発活動とカリキュラム開発、教材提供によって授業支援を行う。
同社 代表取締役社長執行役員の木村弘毅氏は、「プログラミングを楽しんで習う、ということを伝えていきたい。文化と技術が交差する渋谷という場所で、ワクワクする技術やクリエイティブが生まれていくと思う」と話した。
なお、2020年度の小学校におけるプログラミング教育の必修化を見据えて、プログラミング体験、プログラマー・エンジニアの仕事紹介、社内見学を行う「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト プログラミングサマーキャンプ2019」が8月に開催される。詳細は以下の通り。
サイバーエージェント
- 開催日時:8月4日 13:00~15:00
- 対象:渋谷区在学・在住の小学1~6年生
- 開催場所:Abema Towers サイバーエージェント本社
DeNA
- 開催日時:8月5日 13:00~16:00
- 対象:渋谷区在学・在住の小学1~6年生
- 開催場所:渋谷ヒカリエ8階 COURT
GMOインターネット
- 開催日時:8月7日 14:00~16:30
- 対象:渋谷区在学・在住の小学4~6年生
- 開催場所:セルリアンタワー11階 GMOインターネット本社オフィス
ミクシィ
- 開催日時:8月7日 13:00~16:00
- 対象:渋谷区在学・在住の中学1~3年生
- 開催場所:住友不動産渋谷ファーストタワー7階 ミクシィ本社 コラボスペース
各社それぞれの定員は30名で、応募者多数の場合は抽選となる。応募期間は7月1日から7月15日まで。
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