リンダ・リウカス氏の来日に合わせて開催された「ルビィのぼうけん」DAY
「ルビィのぼうけん」DAYは、プログラミング絵本でアンプラグド教材としても使われている『ルビィのぼうけん』シリーズの著者、リンダ・リウカス氏の来日に合わせて開催されたイベント。親子ワークショップ(第1部)に続いて開かれた第2部の教員向けカンファレンスでは、東京都北区立西ヶ原小学校(畔柳信之校長先生、藤原真由里先生、田中美希先生)、同立川市立上砂川小学校(神田恭司校長先生、青木信人先生)、同荒川区立第二日暮里小学校(川上晋校長先生、桑島有子先生)の3校の校長、そして実際にプログラミング教育の実践授業を行った先生が参加した。3校とも、東京都教育委員会により平成30、31年度と2年間の実践研究を行うプログラミング教育推進校に指定されている。モデレーターは宮城教育大学 技術教育講座 安藤明伸氏が務めた。
先行事例がないことのメリット・デメリット
パネルディスカッションの最初のテーマは、「プログラミング的思考教育を実践してみてよかったこと、難しかったこと」だ。
これに対し、第二日暮里小学校の桑島先生は「新しい試みなので、いろいろな意見を出しながらプログラミング的思考について考えることができた。学年、教科といったつながりを考えながら進められた」と述べた。同小学校では、『ルビィのぼうけん』を3、4、5、6年生で活用。例えば3年生では「ダンス、ダンス、ダンス」(動きのパターンを組み合わせてその通りに体を動かす。ループを学ぶ)を使って、自分たちで命令を並び替え、ロボットにダンスをさせることを行った。
一方で、新しい試みだからこその難しさもあったようだ。「本当に教科の狙いにあった活動になっているのか」を考えたと桑島先生。「プログラミングを学ぶのではなく、プログラミングを通じて学ぶので、必然性が本当にあるのかなどを検討していかなければならなかった」と振り返った。
上砂川小学校も「ダンス、ダンス、ダンス」「こまったこと」(命令通りにすると困った結果にならないように順序や判断の間違いを見つける。順序、デバッグなどを学ぶ)などを実践した。同校の青木先生はよかったこととして、子どもたちのICTへの意識の高まりを挙げた。東京都が行った小中高共通のアンケートでは、プログラミング教育をほとんど受けていない中学生と比較して、プログラミング教育を受けた同校の小学生は、「より主体的にICTを活用しようとしている結果が得られた」と青木先生。「コンピューターを身近なものに感じ、主体的に学習に生かそうとする子どもたちが育っていると実感できた」と続けた。
コンピューターやプログラミングへの関心の高まりは、第二日暮里小学校でも見られたようだ。同小学校の川上校長先生は、「今はYouTuberになりたいという子どもが多い」と前置きした上で、少し前まで上位だった「ゲームプログラムを作る人」について、ロボット制御などをやった5~6年生で増えたと報告する。「『あんなすごいゲームは作れない』と思い込んでいたのが、実際にやってみるとプログラミングってこういうものかと実感したのかもしれない」と川上校長先生は予想した。
難しかったこととしては、「国の政策と並行して進めなければならなかった」ことだ。しかも小学校には専門の情報科がない。国語、算数などそれぞれの専門の先生と話し合いながら進めることは「これからの課題」と述べた。