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特集記事(海外動向)

高校生でAI技術を習得? 教科書から見る中国のSTEM教育事情


 第4次産業革命の時代と言われ、各国でSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)教育に力を入れているとき、その動向を把握することが重要です。特に、昨今の中国の動きは急速です。高校生向けの「人工知能基礎」の教科書が2018年4月に出版され、全国40校のトップレベルの高校で使用が開始されました。教科書の現物を手にして、中国関係者と議論をする機会があり、中国におけるSTEM教育の現状を垣間見ることができたので、教科書の内容、背景を紹介します。

産学連携で進む中国のAI人材教育プロジェクト

 筆者は、長年、大学における物理の研究・教育に携わってきました。最近の小中高生のプログラミング教育に関心を持っているものの、人工知能の専門家ではないので、専門的な内容については評価できないことをお断りしておきます。

 今回紹介する高校生向けの「人工知能基礎」の教科書は、香港に本社を置く、画像認識、人工知能(AI)のトップ企業、SenseTime(商湯科技)社が、上海の華東師範大学と協力して作成したもので、高校生向けのAIの教科書としては世界初のものです。SenseTimeは、香港中文大学マルチメディア研究所のAI研究の第一人者である湯暁鴎(Tang Xiao'ou)教授が2014年10月に創設しました。

 同社は2017年11月に、上海市政府と戦略的協力協定を結ぶと共に、上海の華東師範大学などと協力して、上海地区の高校の先生に呼び掛け、高校生用の人工知能基礎教育教材の作成に取り組みました。それに先立ち、中国政府は2017年7月、国務院「次世代人工知能技術発展計画」を発表しました。2030年までのAIに関する産業の到達計画を示すと共に、教育に関して、全国民を対象としたAI教育プロジェクトを段階的に推し進める必要があることを示しました。

 2018年1月に、中国教育部はこの計画を受けて、「普通高等学校課程方案と国語学科課程基準(2017年版)」というカリキュラム設定の方針を発表し、人工知能、IoT、ビッグデータ処理などの内容を導入し、取り分け「データと計算処理」「情報システムと社会」を必須科目に指定し、2018年の秋から実行するようになりました。

 このように、小・中・高校教育段階で、AI教育に関する授業科目を設け、プログラミング教育を徐々に展開していくと共に、大学にAI学科を新設することで、複合型人材を育成し、中国AI人材のレベルアップを図ることが謳われています。

高校生からAI技術を勉強、「人工知能基礎」の教科書

 この教科書は、全9章から成っています。AI研究の歴史から始まり、画像認識、音声認識、動画認識などへの深層機械学習の適用、構文解析、Generate Adversarial Network(GAN)などの最新の研究成果まで紹介しています。

 引用文献には、高校生向けの教科書とは思えない、2017年のarXiv: preprintといった最新の論文も含まれています。最終章では、囲碁のAIソフト、「アルファ碁」、また、その進化版である、「アルファ碁ゼロ」の解説がされています。そもそも、序文も、2016、2017年に、これらのソフトが囲碁のトップ棋士に勝利した話から始めていて、生徒たちに興味を持たせる工夫がなされていると感じました。各章では、基礎的な知識の説明をすると共に、課題を与えて想像力を発揮させる「手脳結合」の学習形式が取られています。

次のページ
高校におけるAIの学習、教科書の活用法

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この記事の著者

岡部 豊(オカベ ユタカ)

 首都大学東京名誉教授。理学博士。1977年東京大学大学院理学系研究科博士課程満期退学。東北大学理学部助手,同学部助教授,東京都立大学理学部教授,大学再編により首都大学東京理工学研究科教授を経て,2015年に定年退職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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