子どもたちがアイロボットの研究員に
子どもたちはまず、白衣を受け取り、アイロボットの研究員となってロボットの開発をしてもらうといった設定で始まった。このワークショップのもう1つの特徴は、講師やサポートを務めるのが社員ボランティアである点。講師も白衣を着て、子どもたちにロボットやプログラミングを教える。
ワークショップはアイロボットのCEOであり、ルンバを発明したエンジニアでもあるコリン・アングル氏によるビデオメッセージから始まった。アングル氏は、自身が子どものころからモノがどうやって動くのかその仕組みを考えることが大好きでロボットに興味を持つようになったことや、大学で初めて開発した宇宙探索ロボットを紹介した。
ビデオを見たあと、ちょっとしたサプライズがあった。アイロボットCEO コリン・アングル氏が会場に来ているという。子どもたちが名前を呼ぶと、本人登場となった。
ロボットは人のために問題を解決してくれるもの
アングル氏は、子どもたちに「ロボットとは? どんな特徴があるか?」と問いかけた。子どもたちからは「疲れない」などの意見が出されたが、「目がない」という意見には、「これは重要なポイントで、今のロボットは必ずしも人の形をしていないものが増えている」と答えていた。
また、「どんなロボットを知っている?」との質問には、ドラえもんやPepper、ASIMO、おしゃべりピカチュウといった答えが出ていたが、鉄腕アトムは知らない子どもたちが多かった。確かに、今の子どもたちにとってのロボットは、いわゆる人型ではなく、おもちゃや、街で見かけるガイドロボットの印象が強いのだろう。
続いてアングル氏は「ロボットは人工的な生き物だと考えることができる。モノを見たり、足で移動したりでき、ときとして考えて動いているようにも見える。機械でできているが名前を付けたくなる存在でもある」と語る。
生き物のように親しみを感じることができ、名前を付けたくなるロボット。アイロボットはそんなロボットを開発しているのだが、その目的は「問題を解決すること」だとアングル氏は言う。ルンバは「床のゴミ」という問題を解決する掃除ロボットだ。
その上で、子どもたちに「どんなロボットを作りたいか」と質問し、改めて自分たちとロボットの関係を考えさせる。この質問に、世界中の子どもたちは「宿題をやってくれるロボット」と答えるそうだが、日本のワークショップでは、癒してくれる動物ロボット、虫を追い払ってくれるロボットなどの意見が出された。
ロボットへの興味からロボティクスの基本概念へ
アングル氏によるセッションは、ロボットとはどんなものかを子どもたちにイメージさせるものだった。ロボットの役目・目的は人間が困っていること問題を解決してくれること、解決を手伝ってくれること、というのが、アングル氏からのメッセージだ。
ここからは、アイロボットジャパンのスタッフ講師がセッションを引き継ぎ、ロボットと人間の違いを考えさせる。そこから、ロボットが動くためには人間が「プログラム」を与える必要があることを理解してもらう。
床にゴミが落ちている場面で、人間なら何を考えてどうするか。人間ならば目でゴミを発見し、頭(脳)の中で「掃除機で掃除しよう」と考える。そして手足と掃除機を使って掃除をする。ロボットに掃除をさせたいなら、これと同じことをロボットにやらせることを考えればよい、といった考え方だ。
そして、「発見する」「考える」「行動する」という3つの動きについて、ロボットではどんな仕組みになっているのかスライドで説明し、ロボティクスの基本的な考え方を紹介した。
発見はセンサーの役目だ。ロボットの頭はコンピュータだ。しかし、コンピュータはプログラム(命令)がないと動かない。人間が作ったプログラムがあれば、ロボットは頭で考えるという動作と、掃除をするという行動(モーターを動かす)を実行することができる。