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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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キーパーソンインタビュー

教員の業務改善のため、市長部局と教育委員会の垣根を越えて取り組む那覇市──その成果を古謝副市長に聞く

人員拡充や弁護士・警察OBの配置で心理的負担を大きく軽減

──アンケートの結果を踏まえて、タスクフォースではどのような施策を実行されたのでしょうか。

 アンケートで要望の多かった内容から優先的に予算化し、迅速に実施しました。特に人員の拡充については、すぐに令和5年度の補正予算を付けて特別支援教育補助員やスクールサポートスタッフの拡充を行いました。

 保護者・地域への対応については専門家による支援体制を構築しました。具体的には、弁護士に相談できるスクールロイヤー制度を整備したほか、今年度からは警察OBの方を学校問題解決支援員として教育委員会に配置し、学校を支援する体制を構築しました。

 保護者や地域への対応において、どこまで学校が時間をかけて対応すべきかという判断は難しいものです。こうした専門家に相談することで、「ここからはもう法律の問題として処理しましょう」「警察の手を借りるべきです」といったアドバイスを受けることができます。市として「ここからはあなたの仕事ではないですよ、安心してくださいね」という線引きを示すことで、先生方の安心につながると考えています。

 授業・指導の業務については、DXを進め、効率化を図っています。具体的には中学校へ採点システムを導入し、採点業務の負担を軽減しました。また、保護者向けの連絡ツールは学校ごとに異なるものを導入している状況でしたが、市として統一したツールを導入することにより、児童生徒に関わる情報を教育委員会から直接保護者へ配信することが可能となり、お便りの印刷や配布に関する作業と時間も短縮されました。

 学校外行事では、特に負担の大きかった夜間街頭指導について、教員の参加を必須としないように見直しました。「旗頭フェスタ」については、地域の団体に指導をお願いし、教員の負担を軽減しました。「那覇ハーリー」は地域の指導者がいない場合も多く、その際はお手伝いいただいた学校に対して、無償のボランティアではなく支援金を支給する仕組みを設けました。

「復帰支援」と「予防」を両輪で進める

──こうしたアンケート結果を踏まえた対策と並行して、那覇市では国・県から「公立学校教員のメンタルヘルス対策に関する調査研究事業」を受託し、令和5年度から実施しています。こちらの内容についても教えていただけますか。

 このモデル事業は、すでに休職している教員への復帰支援や、不調に陥らないための予防に特化しています。これまでは不調をきたした際の相談相手が管理職である校長と教頭しかいないという状況でしたが、本事業では医師、保健師、心理士などの専門職によるオンライン相談窓口が設置されたこと、休職者が保健師とオンラインで定期的に連絡を取り、休職中の過ごし方について助言を受けるなどの支援が行われました。また、全教員向けに不調に陥らないためのセルフケアについての動画配信を実施し、管理職向けには、部下である教員をケアするためのラインケア研修を行い、学校組織全体でケアできる環境を目指しています。

──これらの取り組みは成果として、どのように現れましたか。

 まず、精神疾患による休職者の数は、令和5年度の46人から令和6年度は32人へと、14名減少しました。私たちの取り組みが直接効果につながったと断言することはできませんが、さまざまな要因が複合的に作用した結果として、非常によかったと考えています。

 また、より明確な成果が現れたのは、ストレスチェックの受検率です。令和4年度までの受検率は25.4%でしたが、令和5年度は64.0%、令和6年度は79.3%、令和7年度は87.5%まで改善しました。この受検率の向上は、私たちの取り組みによって、教員の方々の「自分で自分をちゃんとケアする」という意識や、管理職が部下をしっかり見守る「ラインケア」の意識が浸透してきた結果だととらえています。

──現場の教員や校長からの反響について教えてください。

 タスクフォースの取り組みについては、校長研修会のアンケートで98%が「効果があった」と回答しています。特に評価が高かったのは、各種支援員の拡充や、新年度の準備期間を確保できた春休みの延長です。

 また、生徒指導や保護者対応に精神的な負担を感じていた現場にとって、スクールロイヤーや警察OBの学校問題解決支援員の設置は「非常に大きな成果が出ている」といった声を頂いています。

次のページ
各学校が自走して業務改善に取り組めるように

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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