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イベントレポート(英語教育)

留学生に選ばれる大学になるためのポイントとは? 高等教育「国際化」の課題を日・米の事例から考察する

「Duolingo English Test リーダーシップセミナー」レポート


6年目にして留学生の割合が20%に! 京都先端科学大学の事例

 セミナーの最後のセッションでは、京都先端科学大学の事例が発表された。同学は正式な設立から6年で、学部における留学生比率20%を達成している。

 設立直後の認知の少ない状況から、海外の学生に向けてどのように大学の魅力を訴求したのか。また、日本語の学習を含めた留学生の支援体制はどうなっているのか。留学生受け入れの戦略について、副学長の田畑修教授が解説した。

京都先端科学大学 工学部学部長/副学長 田畑修教授
京都先端科学大学 工学部学部長/副学長 田畑修教授

 京都先端科学大学は、2019年に前身の大学から名前を変えて再スタートした。2020年から工学部のすべての授業を英語化し、積極的に留学生を受け入れている点が特徴だ。2025年の9月にさらに2つの学部に国際コースを設置し、留学生を330人受け入れた。

 「これで学部生における留学生の割合は20%になりました。このまま受け入れを続けると、4年後には30%に達する見込みです」(田畑教授)

 同学のもうひとつの特徴が、留学生の出身国の多様さだ。東南アジアをはじめ、ヨーロッパやアメリカ、南米、アフリカなど全世界から学生を集めている。なぜこうしたグローバルな留学生受け入れが可能なのか。

 田畑教授は「教員だけでは実現できません。事務組織のサポートがあったからこそ、わずか数年で留学生の割合を20%にできたと強調したいです」と述べたうえで、「入学時に日本語の能力を問わないこと」が優秀な学生を集められる大きな要因だと指摘した。

 「工学部の授業はすべて英語ですから、日本語能力を問わず英語だけで挑戦できるということで、非常に優秀な留学生が受験してくれます。例えばインドやバングラデシュ、パキスタンといった国からトップ5~10%層の学生が入学しています」(田畑教授)

 では、どのように志願者を集めているのか。同学ではウェビナーの開催や、「Global University Fairs」というフェアへの出展、現地の高校への訪問といった施策を行っているという。特にフェアについては「日本の大学からブースを出しているところは極めて少ないです」と田畑教授。

 また、それぞれの国の留学をサポートするエージェントとも連携しているほか、WebサイトやSNSでの発信にも取り組んでいる。

 入試に関しては、アドミッションオフィスで書類選考を行うほか、英語を母国語としない学生に対してはDuolingo English Testのスコアを評価基準として選考を行っている。

 入学が決まった後のサポートも重要だ。というのも、入学時には日本語能力を問わないものの、大学としては卒業後も日本で進学・就職してほしい。そのため、最初の1年半で徹底的に日本語の教育を行っている。春休みや夏休みの集中講義も含めて、21科目の日本語講義を実施し、18科目以上の単位取得で卒業という仕組みだ。

 「入学時に日本で就職したい留学生は半数程度ですが、実際に卒業する間際には、7~8割が日本で仕事をしたいと答えています」(田畑教授)

 一方で、日本人学生の英語教育も充実している。留学生が合流する9月までの半年間、数学と物理のほかに英語の授業が入る。日本人の在学生向けにはGTECで英語4技能を評価しており、入学後1年間で急激にスコアが伸びるという。

 「英語能力が十分な日本人学生を受け入れて、留学生と一緒に学んでもらうのが従来の考え方です。しかし、それでは受験者がいなくなってしまいます。伸びしろを期待して最低限の英語能力で受け入れて、入学後に鍛えるといったように発想を変えています」(田畑教授)

 同学のもうひとつのカリキュラムの特徴として「キャップストーン」というプロジェクトベースラーニングの取り組みがある。企業から出された課題にチームで取り組むもので、留学生3人、日本人2人のチーム構成が一般的だ。

 キャップストーンでは毎週企業のエンジニアとのミーティングに参加し、課題について議論する。同学と連携している約130社の企業があり、今年度はその中から50社が協力している。

 プロジェクトを通して、企業側も「留学生でもエンジニアとして共同作業ができる」ということを実感してくれているという。日本の企業への就職において難しい点は、工学系の職種でも日本語能力のN1(最高)レベルが求められることだ。「企業側のマインドセットを変える地道な取り組みも重要です」と田畑教授は指摘した。

 また、田畑教授はこれからの大学の役割の変化についても持論を述べた。

 「これまでは企業が大学の偏差値で人材をフィルタリングしてきました。これからは、大学が学術的な知識だけでなく、汎用的に役に立つ知識を体系的に教えて、そのうえで企業に排出していくことが必要です。フィルターではなくアンプリファイ(拡大)していく、学生一人ひとりの能力を伸ばすという本来の役割を果たさなければいけません」(田畑教授)

 6年という短期間で急速にグローバルな教育環境を整備した京都先端科学大学。田畑教授は「10~20年後には日本の人口の10%が外国人になる時代です。働いている環境に外国人がいることは当たり前なので、早い時期に違う文化の人と一緒に仕事する経験をして、自身も変わっていくことが大事なのではないでしょうか」と提言した。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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