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イベントレポート(学校経営)

大学経営は新時代へ──北海道国立大学機構の挑戦と、持続可能な大学経営とは?

New Education Expo 2025「これからの時代の大学経営 ~経営統合を踏まえた実学の知の拠点~」レポート

北海道国立大学機構の基金運営と産学連携、その展望とは

 北海道国立大学機構は、持続性と自由度の高い自己資金を確保するべく「ヒトづくり・モノづくり基金」を創設した。これは、従来の大学基金のように同窓生からの寄付に頼らず、企業との産学連携活動の一環として「寄付というより投資」を募る形の基金である。

 長谷山氏は「『国立大学法人も資本を蓄積・増加させよう』という意識を高める意味もある」と設立のねらいを説明する。目標額は10億円で、募金期間は定めていない。基金は取り崩さず、分野融合的な研究事業や人材育成に投資していく(注:10億円は北海道国立大学機構の収支規模の約1割に相当する)。

 「目的積立金や国立大学の既存の基金と違い、将来取り崩すことを想定したものではない。基本的に取り崩さずに増やしていき、運用の果実で教育研究を充実させる発想だ」(長谷山氏)

 こうした基金を運用し、資金源を確保することによって、3大学連携の教育研究が発展し、北海道の課題解決にも貢献できるという。

 北海道は食料自給率が約220%、機構本部や帯広畜産大学が位置する十勝地域では約1200%と豊かな地域だが、2050年には十勝地域における農業従事者が現在の半分以下にまで減少する予想だ。そうなれば、少ない農業経営者で農業生産高を維持・拡大することが求められる。そのためには農学を基本としながら、AI技術など工学の知識を活用したスマート農業や、農業・酪農経営者のビジネススキルを高める商学の知識など分野融合的な人材育成が不可欠となる。

 こうした北海道の課題に対して、北海道国立大学機構は大学が地域の中核となり、産学官金連携を進めている。その代表的な取り組みが「教育イノベーションセンター」(ICE)と「オープンイノベーションセンター」(ACE)という2つの組織の運営だ。

 ICEでは、3大学のそれぞれの強みである「ビジネス」「農業・酪農」「テクノロジー」の分野のスキルを融合的に持った人材育成プログラムを提供している。どの分野のプロフェッショナルを目指すにしても、北海道で活躍するためには、この3つのスキルが必要であるという発想で、文理融合・分野横断の学びを提供している。

 またICEでは、リカレント教育を推進する「ユニバーサル・ユニバーシティ構想」が始まっている。自治体と連携して、全道で10カ所のサテライト教室を展開し、オンラインと併用した教育を提供。2030年までに高等教育に触れたくても触れられない北海道民の数をゼロにしようとする取り組みである。

 一方ACEは、地域発展に資するテーマに関して企業と連携した研究開発を推進している。略称のACEは、アグリカルチャー・コマース・エンジニアリングの頭文字をとったものだ。テーマとしては、スマート農畜産業や防災、観光、冬季スポーツなど北海道ならではの課題を扱う。

 長谷山氏は例として「AI/IoTスマート農畜産業プロジェクト」の取り組みを挙げた。収穫作業を行うハーベスターを扱える熟練者が減っているため、IT技術を活用して自動化し、スマートフォンのアプリから操作できるようにする試みを行っている。また、流氷やジュエリーアイスなどの出現を予測し、観光に役立てる「Zekkeiプロジェクト」にも取り組んでいる。

 さらに、こうしたICE・ACEの取り組みを社会実装につなげていくためには、それを担う組織も必要となる。そこで2024年には3大学それぞれが持つ産学官金連携機能を統合したワンストップの窓口として「産学官金連携統合情報センター」(IIC)も設立された。この組織が企業や行政からのニーズと、ICE・ACEのシーズをマッチングさせる役割を果たす。

 最後に長谷山氏は、北海道という地域の課題と強みについて言及した。北海道は、全国でも少子高齢化が進み、労働力が不足するなど多くの課題に直面する「課題先進地域」である。一方で食料自給率日本一、都道府県別の魅力度ランキングでは16年連続で1位、ふるさと納税額が全国1位、太陽光・風力・地熱発電などの新エネルギーの導入ポテンシャルが高いといった強みもある。だからこそ「課題解決先進地域」として課題解決の先駆者になることを目指している。

 「課題が多くて『大変だ』と考えるのではなく、発想を転換して、これらの資源をどう生かすかという視点で取り組んでいくと面白い。そこに知の拠点である大学も協力していく」と長谷山氏は述べる。そして「北海道国立大学機構は、民間の経営の発想を取り入れ、また3大学が連携して知の拠点を構成し、産学官金連携の力で北海道の発展に貢献したいという思いがある。皆さんにも、この機構の今度の活動を見守って応援していただけたら」と語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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