Google for Educationは、校務DXに向けたゼロトラスト環境の導入を後押しする4つの特別オファリングを、自治体の教育委員会向けに提供開始した。なお、同プログラムは2025年12月31日までの期間限定提供となる。
同社は教育DX推進のための枠組みとして、「学びのDX」「校務のDX」「セキュリティのDX」の3つの柱を定義してきた。今回、4つ目の柱である「ゼロトラストによるDX」が加わり、校務のDXをセキュリティ面からサポートする。

3月25日に開催されたメディア向けの説明会では、グーグル合同会社 Google for Education 営業統括本部 本部長の杉浦剛氏が登壇し、「GIGAスクール構想第2期では、教員端末も児童生徒と同じChromebookを使いたいというニーズが増えている」と説明。同社は、児童生徒・教員向けのChromebookには専用MDMである「Google GIGA License」を提供している。
一方で、授業用のChromebookのほか、他OSが搭載された校務用端末の「2台持ち」で運用している自治体も多くあるという。そうした複数のOSが混在する環境でも、「Google Workspace for Education Plus」や「Chrome Enterprise Premium」の組み合わせにより、一貫したゼロトラストポリシーを適用し、セキュアなアクセスとデータ保護が実現する。

今回提供が開始された4つの特別オファリングの1つ目は、ゼロトラスト導入に向けた事前アセスメントなど、導入までの計画づくりの無償支援。2つ目はゼロトラスト関連製品の特別オファリングの提供(1000名以上が対象)、3つ目はChromebookとゼロトラスト検証用トライアルライセンスの貸し出し、4つ目はGoogleによるゼロトラスト関連のセキュリティ研修の実施となる。

説明会ではゼロトラストによるDXを推進する自治体事例もいくつか紹介された。山形県では「Google Cloud」上に構築した電子申請システムにより、県立高校の各種申請書等の電子化・自動化が実現。転記ミスなどが減ったほか、校務効率化によって費用の大幅な削減も実現したという。

福島県では、県域で「Google Workspace for Education」を活用し、小学校1年生から高校3年生まで同一のアカウントで学習履歴を保存できる仕組みが構築されている。

群馬県吉岡町では教員端末をChromebookに統一したうえで、Google Workspace for Educationのセキュリティ機能活用によりゼロトラスト環境を実現した。その結果、場所にとらわれない柔軟な働き方が実現したほか、2年間で約40万枚の紙の使用を削減することができたという。

加えて説明会では、奈良県奈良市におけるゼロトラスト導入の成果も詳しく紹介された。ビデオメッセージで登壇した奈良市長の仲川げん氏は、ゼロトラストによる新システムへの移行でかかった費用について言及。事業は約10億円規模で、以前と比較すると2000万円ほどの差があるというが、「それよりも圧倒的に教員の働き方改革が進んだこと、教員間のコミュニケーションがスムーズになったことのメリットが大きい」と述べた。

続いて、奈良市教育委員会事務局教育DX推進課 教育ICT推進係長の米田力氏が奈良市のゼロトラスト環境について詳しく説明した。同市の学校では、クラウドやチャット、ポータルサイトを活用することによって職員朝礼の時間が削減されたほか、家庭からの欠席連絡を電話からオンラインに移行することにより、トータルで年間100時間以上の業務時間を削減した。そのほかの保護者との連絡も100%電子化しており、多くの学校で働き方改革の効果が実感できているという。

なお奈良市では、文部科学省が提示した「教育情報セキュリティポリシーガイドライン」に基づいて、教員が安心して使えるクラウド環境を構築している。費用については市長の仲川氏から言及があったように、Google基盤でまとめることでコストを抑えることができたという。この「奈良市モデル」のゼロトラスト環境を参考に、複数の自治体が同様にゼロトラストの導入を実現している。


これらの取り組みのねらいについて、米田氏は「あくまで目指すのは子どもたちの学びの充実だ。そのためには教員がまずは校務でクラウドを使用し、習熟する必要がある。その経験を授業に活かしてもらいたい」と語った。

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