ゲーミフィケーションの効果はモチベーションアップだけではない?
──改めて「ゲーミフィケーション」とは何か教えてください。教育分野ではどのように活用されているのでしょうか。
杉谷氏(以下敬称略):ゲームの仕組みや要素を活用して非ゲーム分野に取り入れることにより、 モチベーションをアップさせたり、愛着を持ってもらったりするのがゲーミフィケーションです。特に人が「やりたくない」と感じてしまうことにアプローチする際に適しています。ゲームに熱中するように、人が夢中になる欲求を喚起し、ついやりたくなるような体験を作るのです。

荻上氏(以下敬称略):教育分野では「モチベーション」と「コミュニケーション」の2つの領域において、ゲーミフィケーションが活用できると考えています。
クラスに30~40人の児童生徒がいるとして、それぞれの子どものモチベーションにはばらつきがあるはずです。自分から進んで勉強をがんばれる子もいれば、そうでない子もいます。児童生徒が自ら学びたくなるようなモチベーションの向上に、ゲーミフィケーションが役立ちます。
また、教育現場においては教員同士や教員と保護者のコミュニケーションも重要です。実はこのコミュニケーションにも、ゲーミフィケーションが効果を発揮するのです。

──コミュニケーションにおけるゲーミフィケーションの活用とは、どのようなことでしょうか?
荻上:職員会議をイメージしてください。多くの学校では、校長先生や教頭先生が一斉に共有事項を伝達するような、昔ながらのスタイルが続いています。時には先生方にとって煩わしい内容が淡々と伝えられることもあるでしょう。そこに「司会をじゃんけんで決める」といった遊び心を取り入れるだけでも、よいアイスブレイクや場づくりのきっかけになります。 これもゲーミフィケーションのひとつです。
また、教員と保護者が話す場についても、面談形式ではどうしても堅苦しくなり、対立関係が生まれやすいものです。カードゲームなどの要素を取り入れたワークショップ形式にすることで、コミュニケーションがしやすくなります。
このように、人間関係をより円滑にするための仕掛けとしてもゲーミフィケーションは活用できるのです。
なぜ東京学芸大学がゲーミフィケーションに取り組むのか
──今回、セガ エックスディーが「ゲーミフィケーション研究所」を立ち上げ、東京学芸大学と共同でプロジェクトを実施することになった背景を教えてください。
杉谷:ゲーミフィケーション研究所は、ゲーミフィケーションの発展と普及を目指す目的で、2025年2月に設立されました。ゲーミフィケーションの一般的な認知度は16%[※]と、まだまだ低い状況です。私たちは世の中のゲーミフィケーションへの理解を高め、あらゆる分野でプレイヤーを増やしたいという思いがあります。教育分野もそのひとつです。
荻上:私たち東京学芸大学は、教員養成の国立大学として「堅苦しく、真面目」なイメージを持たれがちです。教育の領域こそ、遊びが持つ余白や余裕を大切にし、産官学連携による新しいチャレンジを創出するため、6年前に教育インキュベーションセンターという組織が設立されました。コンセプトには「Explayground」というキーワードを掲げており、「遊びと学びをシームレスにする」という意味を込めています。ゲーミフィケーションは、このコンセプトにもマッチしていると感じ、ご一緒することになりました。
[※]出典:セガ エックスディー「ゲーミフィケーションに関する意識調査」2024年11月20日