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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZineオンラインセミナー

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イベントレポート(情報リテラシー)

「生成AI時代の基礎学力」とは何か? 学芸大附属小金井小・鈴木教諭が、学びのあり方の再考を提言

「AIと生きる未来をどう創るか」を考えるフォーラム レポート 前編

 生成AIやICTツールが急速に発展する中、AIと共存する社会を築くためには、私たち一人ひとりがどのような知識やスキルを持つべきか、考える必要がある。そうした背景のもと、「AIと生きる未来をどう創るか」と題するイベントが2月19日に鳥取大学で開催された。このイベントでは、小学校の教育現場で生成AIの活用を模索し、文部科学省の生成AIに関するガイドライン改訂の委員を務めた、東京学芸大学附属小金井小学校の鈴木秀樹教諭による基調講演のほか、「情報モラル教育」「メディアリテラシー教育」を専門に研究する今度珠美(いまど たまみ)氏、元TBS報道アナウンサーで白鴎大学の特任教授である下村健一氏らを交えたパネルディスカッションが行われた。本稿では前後編の前編として、基調講演の様子を中心にお届けする。

ICTや生成AIが「公正な学び」実現の鍵になる

 冒頭、本イベントの主催者であり、鳥取県民チャンネルコンテンツ協議会 会長/鳥取大学 学長の中島廣光氏が登壇。日ごろより教育現場でICTを活用している現状に改めて光を当てるとともに、これからの教育のあり方を多角的に議論する機会として、本イベントの開催に至った経緯を以下のように説明した。

 「私たちは、従来の『平等な学び』という枠組みだけではなく、一人ひとりのニーズに合わせた『公正な学び』の実現こそが、これからの教育改革の鍵であると考えている。ICTや生成AIなどの最新技術は、まさにそのための強力なツールとなる。本日は皆さまとともに、子どもたちが主体的に『考える力』を養い、真に対等な議論の中で学び合う環境を創り出すための契機としたい」(中島氏)

鳥取県民チャンネルコンテンツ協議会 会長/鳥取大学 学長 中島廣光氏
鳥取県民チャンネルコンテンツ協議会 会長/鳥取大学 学長 中島廣光氏

「インクルーシブ教育×生成AI」は何をもたらすのか

 続いて、鈴木教諭による「生成AI時代の基礎学力」と題した基調講演が行われた。

東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木秀樹教諭
東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木秀樹教諭

 鈴木教諭はデジタル教科書を効果的に活用したインクルーシブ教育の実践者としても知られ、多数の関連著書がある一方で、生成AIを活用した先端的な授業にも取り組んでいる。

 講演の冒頭で鈴木教諭は、自身も委員として取りまとめに関与し、2024年の年末に改訂版が公表された「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」に言及。小学校における生成AIの活用については「とても、持って回った言い方をしている」とし、全体的に抑制的な印象を与えてしまっているのではないかと指摘する。

 さらに鈴木教諭は、このガイドラインのほか、最新の学習指導要領においても、従来の「均一な学び」ではなく、子どもたち一人ひとりの個性や状況に合わせた「公正な学び」を実現するための基盤として、ICTの活用が不可欠とされていることを紹介。こうした前提のもと、まず鈴木教諭は、生成AI以外の「教育におけるICT活用」の意義について解説した。

 「なぜ教育現場でICTを活用するのか?」その根底にあるのは、学習の過程で常に繰り返している「入力する→考える→出力する」といった一連の行為において、ICTが最初の「入力する」と最後の「出力する」ことに効果を発揮するという考え方だ。

 これらの行為はデジタルだけでなくもちろんアナログの手段もあり、「入力」には教科書や教材のほか、さまざまな提示物が該当し、「出力」にはプレゼンテーションやテスト、レポートなどが該当する。そして、これらの「入力する」「考える」「出力する」のいずれの行為においても、常に苦手意識を持つ子どもが一定数、教室の中に存在する。このうち、ICTは特に「入力」と「出力」の困難さを解消する手段として有効なのだが、それを苦手意識がある児童にだけ適用するのは簡単ではない。

「入力」と「出力」の過程で効果を発揮するICT
「入力」と「出力」の過程で効果を発揮するICT

 例えば、合理的配慮が必要なAさんのみがデジタル機器等を使おうとすると、周囲から「なぜAさんだけ」という声が上がりがちだ。そこで教師は周囲にAさんが使う理由を説明するものの、結果としてAさん自身が「私だけがそれを使うのは恥ずかしい」と感じ、逆に支援を拒む心理状態に陥ってしまうこともある。それを防ぐために、鈴木教諭は「同じ内容を学ぶ際は複数の学び方を用意し、同時並行で活用することによって、すべての子どもが平等にその環境を享受できる仕組みを作り、それを最大限に活かすべきだ」と指摘する。

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生成AIが人間の「考える」をサポートする

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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