鳴門教育大学と徳島県教育委員会は、2026年度に実施する2027年度入試から、徳島県の小学校若手リーダー教師を養成する「地域教員希望枠」を導入することを、12月23日に発表した。
今回の「地域教員希望枠」導入の背景には、徳島県内における小学校の小規模化がある。同県では、2013年度~2022年度の10年間で小学校の在籍児童数が4643人減り、約12%の減少率となっている。さらに2030年度には、現在から19.5%の減少となることが予測されているため、全県的な再編統合により小学校の数が減少している。しかしながら、児童の通学の難点などの理由で再編統合にも限度があり、今後は小学校の小規模化が進行し、県内全域に小規模小学校が点在する状況が想定されている。
徳島県教育委員会は、他校種や他機関と連携しながら小規模校の教育活性化を図る「チェーンスクール」「パッケージスクール」の取り組みを推進している。一方で、さらに小規模化が見込まれる学校において、核となり活躍できる資質を備えた教員の確保も必要不可欠としており、質の高い教員を安定的に輩出していく体制の構築が必須となっていた。
そこで徳島県における「地域教員希望枠」では、県内のさまざまな課題への対応力を持ち、学校の小規模化の中でも学校間連携を推進して学校力を強化できる若手リーダー教師を養成していく。学部4年間と教職大学院3年間の7年計画となっており、教職大学院での3年間のうち、2年目は教員として学校現場で勤務し、3年目は勤務しながら教職大学院を修了する。
県内外を問わず、徳島県の小学校教師を目指す強い意欲を持った学生を「地域教員希望枠」として募集し、同枠で入学した学生は鳴門教育大学と徳島県教育委員会が連携して開設する「徳島スーパールーキー教員養成プログラム」によって、即戦力となる知見・力量を獲得していく。
入学定員は5名で、出願にあたっては鳴門教育大学が主催する、「徳島で輝く先生になる!鳴教プロジェクト」(仮称)を修了する必要がある。入学後は、学修集団(コホート)を形成しながら、「徳島スーパールーキー教員養成プログラム」として徳島県中核教員養成科目群といった特色あるカリキュラムを受講する。
さらに教職大学院の修了後も、直面した課題解決に対応すべく鳴門教育大学が適時バックアップを行う。
「徳島スーパールーキー教員養成プログラム」では、教職に対する意欲や使命感、学習指導力や生徒指導力といった基盤的な教師力量に付加して、以下の4つの力量育成を目指す。
- 教師として主体的に学ぶ力・スキル
- 小規模化する学校の教育力の維持・強化のために、学校を取り巻く環境・課題を分析・理解し、その解決に向けた手だてを探究していく力
- ICTの活用などにより学校間連携を積極的に構築推進できる力
- リーダー教員として教員集団をファシリテートする能力
これらの力量を確実に修得させるべく、学部・教職大学院を通して特設科目「徳島県中核教員養成科目群」を設定するとともに、大学院修了後も引き続き学校間連携などを推進し得るネットワークとして機能させるべく、地域教員希望枠学生(5名)のコホートによる協働学修をベースに、学部・教職大学院接続インターバル型履修によるカリキュラムを展開する。
「徳島県中核教員養成科目群」は、5つの科目群で構成される。具体的には、学部段階で人権・防災・特別支援教育等推進校での実習を経験することで、教職大学院段階で小規模校における、よりレベルアップした教育実践力・省察力を育成する「地域教員実習科目群」、小規模校の教育課題などについて探究し、改善策を提案する力を育成する「小規模校学校教育改善科目群」、教師としての教育改善のため、課題分析や解決方策を探究する力を育成する「教育改善探究科目群」、教師として主体的に学ぶ力・スキルを育成する「セルフデザイン型学修応用科目群」、学校課題分析や学校間連携にICTを活用する力を育成する「ICT活用・データサイエンス科目群」で構成される。
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