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イベントレポート(ICT活用)

学習者中心の「探究」のあり方とは? 瀬戸SOLAN学園初等部における学びの姿

「第13回 次世代Classフォーラム」レポート

SOLAN式の「探究」で学んできた6年生による「発表」と「提案」

 「個人探究」の授業の後には、6年生の児童3名(伊藤さん、長谷部さん、小澤さん)によるセッション「SOLANの教育について話そう」が行われた。このパートは全体を小澤さんが進行し、長谷部さんと伊藤さんは「SOLANに来て変わったこと」を自身の経験を交えて話すスタイルで進行。なお、本イベントの告知段階では、普段指導にあたっている三宅教諭を交えた「教員と児童によるセッション」と案内されていたが、当日は60分間のセッションをこの3名の児童だけの力で最後まで進行していた。

 司会の小澤さんは「伊藤さんと長谷部さんは、SOLANに来て探究を通して自分の人生が大きく変わったそうです」と2人のことを紹介。具体的に2人にどのような変化があったのか、それぞれが自分の言葉で話してくれた。

左から伊藤さん、長谷部さん、小澤さん。この3名だけでこのセッションを最後まで進行した
左から伊藤さん、長谷部さん、小澤さん。この3名だけでこのセッションを最後まで進行した

 伊藤さんは、2年生まで通っていた公立小学校の担任のクラス運営に疑問を持ち、あまり学校に行くことに意味を見いだせなくなっていたところ、ちょうど翌年度に瀬戸SOLAN学園初等部が開校することを見つけ、小学校3年生のときに転校したという。そこで同校の「探究」に触れることになったが「正直、最初は探究学習に苦手意識があった。特に探究の4つのステップである『見つける・調べる・まとめる・伝える』のうち、最初の2ステップは得意だったが、後半の『まとめる・伝える』がとにかく苦手だった」と話す。

 しかし、学校内で開催されるプログラミングコンテストやビブリオバトルなどで入賞を重ねるうちに、だんだん苦手意識が薄れ、プレゼンテーションのスキルが向上することで自分の意見を自信を持って表現できるようになった。伊藤さん自身は「公立学校は、いろいろな教科の内容を整理して教えてくれるという面ですごく優れていると思う。でも、自分が公立学校に通い続けていたとしたら、自分の意見を表明することがなかなかできず、指示待ち人間になっていたかもしれない」と振り返る。

 続いて話をしてくれた長谷部さんも以前は公立学校に通っており、学業面でも成果を出せていたものの、もっと学校の中で「こういうことを学びたい」という意欲が強くなり、同校が開校した年の9月に転入したそうだ。長谷部さんは入学当初、「探究=調べ学習」という程度の認識でしかなかったが、1年後には「探究とは問い続けること」という認識に変わったそうだ。

 実際に、探究テーマは「海はなぜ塩辛いのか」から始まり「海は地球環境と関係が深い」「地球環境に大きな影響を及ぼしているのは地球温暖化」「温暖化の原因である二酸化炭素排出が多いのは発電」「環境負荷が少ない発電に水素発電がある」「だが水素のことはほとんど知られていない」「水素への関心を持つ人をどう増やすか」といったように、問い続けることでテーマが徐々に変化していった。現在は水素についての認知度を高めるためにNPO法人に参加して交流したり、政治家の方と意見交換をする活動に参画したりしているという。「私にとっての探究は好きなことを育ててくれた存在で、今やっている活動に一歩踏みだす後押しをしてくれるもの」だとした。

 この後、小澤さんの司会のもと、「これから始まる中等部の運営はどうなるのか」「建学の理念をどうやって下級生に伝えていくべきか」など、3人が感じている「課題」について、理事長である長尾氏を交えた忖度なしのディスカッションの様子も公開された。3名がそれぞれ当事者意識を持って解決したい学校運営上の課題があること、それらの課題を解決していくにあたり学校や教員が「支援」を行うことが伝えられ、3人をはじめとする同校の児童が今後中等部に在籍時、さらには同校の卒業後にどのような活躍をしてくれるかが、今から楽しみだ。

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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