次世代Classフォーラムとは
イベントを主催した教育産業株式会社は、愛知県名古屋市に本拠地を置き、映像・音響から始まり近年では教育ICT領域のソリューションを学校や教育委員会などに提供している、80年以上の歴史を持つ専門商社だ。同社では本稿で取り上げる「次世代Classフォーラム」に加えて、「KSGゼミナール」という2つのブランドの教育ICTイベントを定期的に開催している。次世代Classフォーラムはその名の通り、デジタル技術などを駆使することで従来の学校の枠組みを超えた「次世代の学校(Class)」のあり方を提案するイベントであり、今回で通算13回目の開催となる。すべての企画・運営は、同社のICTチーフコンサルタントである山口宗芳(やまぐち むねよし)氏が務める。
なお、本イベントにおいて同社はあくまで「黒子」であり、公開授業やゲスト講師による講演を通して、来場者に新たな教育の価値を提案するスタイルを貫いている。今回も、会場の瀬戸SOLAN学園初等部において同社が映像・音響や無線通信環境の構築を行ったことが簡単に紹介されただけで、来場者にはこれからの学びのあり方を会場校と一緒になって伝えることに徹していた。
瀬戸SOLAN学園が大切にする「とがった子を認め、育てる」教育
イベントではまず、学校法人SOLAN学園の理事長である長尾幸彦(ながお ゆきひこ)氏が登壇。今回の会場校は「瀬戸SOLAN学園『初等部』」と案内されているが、2025年度からは中学部を開校し、学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN学園 初・中等部として小中一貫の9年間の教育を展開する私立の一条校という位置付けになる。同校の建学の精神は「『グローバルシティズンシップ』の育成」であり、世界で通用し、持続可能な社会を創造できる子どもたちを世に送り出すことを目指したカリキュラム構成となっている。
「正義の味方みたいではあるが、『世界をよくするんだ』ということを目指している。そのための我々の合言葉は『教えない、信じて待つ、寄り添って考える』だ」(長尾氏)
同校では、従来の知識偏重型の教育から脱却し、自ら学び、考える力を育成するために、英語とICTをツールとして活用しながらグローバル社会で活躍できる人材の育成を目指している。これらの考え方自体は学習指導要領や文部科学省・経済産業省などが発信する文書でも表現されているが、特に同校の特徴が色濃く反映されているのが、9年間のカリキュラムの中で中心に位置付けられている「個人探究」だ。
これはその名の通り、グループではなく一人ひとりの児童生徒の興味関心を起点に、自身で設定したテーマについて進めていく週2コマの探究学習の時間を指す(詳細は後述)。加えて、仲間と協働して進める「プロジェクト学習」が週3コマ、さらに探究の基盤となる「情報」を学ぶ時間が週45~60分、いずれも小学1年生から確保されており、かなりの時間を探究領域に費やしていることになる。
これについて長尾氏は「本校は個人探究を軸にカリキュラムを構想しており、探究を通じて自分の『好き』を極めることを重視している。それには十分な時間と『支援』が必要。教師は『指導』するのではなく、児童生徒の探究プロセスの『支援』に徹している。その中で児童生徒には自然と課題を認識してもらい、PDCAを回していくように導いている」とし、すべての児童生徒が自分で選んだテーマについて「問い」を中心とした学びを深めていくと説明した。そして「ぜひ本校の個人探究の模様をじっくりとご覧いただければ」と述べ、「個人探究」の授業の模様が来訪者に公開された。