日本高等学校教職員組合(日高教)は、教職調整額13%の実現に向けた、文部科学省への署名提出行動から財務省への要請行動までを、12月4日に報告した。
教職調整額については、5月13日に中教審の諮問部会が、教職調整額10%以上は適切な水準であると示したことを受けて、6月21日に教職調整額を10%以上に引き上げる教員給与特別措置法(給特法)の改正案を、議会に提出することが閣議決定されている。さらに文科省は8月27日に、教員の「処遇改善」「学校における働き方改革の更なる加速化」「学校の指導・運営体制の充実」を示して、「処遇改善」として教職調整額を10%以上にすることについて言及した上で、教職調整額13%を含む予算232億円を財務省に対して概算で予算要求した。
文科省の要求に対して、財務相は「文科省施策全体の歳出・歳入の見直しにより財源を捻出し、追加での予算増額をすることは認めない」という見解を示すとともに、教職調整額13%に対して「根拠に乏しい」と厳しく批判している。財務省による「教員のなり手不足は給与だけが問題なのか」「残業を減らすなど、重要なのは学校における働き方改革であり、給与だけ上げればいいという考えは疑問」といった見解が、新聞報道各社によって伝えられ、教職調整額13%の実現が不透明な状況となった。
こうした状況を受けて、文科省が示した概算要求を実現すべく、日高教は教職調整額13%の実現に向けた署名活動を行い、文科省へ署名を提出した上で財務省への教職調整額13%実現に向けた、要請行動を行うこととしている。
日高教は、教職調整額13%の実現を「教育が多様化・複雑化し、多くの知識や高度な専門性を必要とされる現代の教員という仕事の特殊性に対して、教員の尊厳とプライドの対価として支払われるものだ」と考えている。教職調整額は、教師の残業代として支払われるものという誤った認識があるものの、時間外勤務の代償は学校における働き方改革の延長線上に残業手当としてあるものでなければいけないと考えており、「学校における働き方改革」は今後もさらなる推進を図るべく、関係省庁および政党への要請行動を通じて、強く求めていく。さらに、学校における働き方改革が限界を迎えた際には、残業手当の支給を求めるとしている。
10月18日には、日高教が文科省において文科省大臣官房学習基盤審議官・森孝之氏、初等中等教育局財務課課長補佐・斉藤健一氏に、教職調整額13%の実現に向けた署名を提出した。
さらに11月5日には、日高教が財務省において財務省主計局文部科学係主計官補佐・柳川純一氏ほか2名に対して、教職調整額13%の実現を含む教育予算の確保について申し入れを行っている。日高教からは小野山中央執行委員長(島根高教組委員長兼務)、愛媛高教組からは菊池委員長、福島高教組から小桧山委員長、栃木高教組からは水沼書記次長、島根高教組からは仁科ブロック議長の5名が参加。小野山中央執行委員長は、前日に報道された公立学校の教員にも残業代を支給するという報道に触れつつ、「教職調整額の議論に残業代の議論が加わることで教職調整額の実現が遅れたり、消滅したりしてしまうと教員の処遇改善が遅れ、離職と教員をめざす若者の減少が加速し、更なる教員不足を招くのではないかと危惧します。即効性がなければ人材不足にも教育崩壊にも歯止めがかからない状況です。教職調整額13%の実現は『チーム学校』を合い言葉に力を合わせて多様化、多忙化するこの難局に立ち向かっている全教職員に勇気を与えるものです」と述べた。
その後、栃木高教組・水沼書記次長が行った、教職調整額13%の実現見通しについて質問したところ、柳川文部科学係主計官補佐から「今、まさに、年末の議論に向けて関係各省で議論を行っている最中であり、明確な回答は差し控えるが、教職調整額増額に関する要望は多く寄せられており、財務省としても要望として受け止めている」と答えている。
島根高教組・仁科ブロック議長による、「子育て、介護などで学校に残って仕事をすることが難しく、仕事を持ち帰ってやっている実状もあり、残業代はなじまないのではないか」という質問にあわせて、福島高教組小桧山委員長が「同じ業務でも教員によって時間のかけ方が違う、多岐に渡る教員の業務をどう管理していくのかという課題もある」と発言し、残業代の支給は学校における働き方改革の延長線上にあり、教職員の処遇改善と残業代の議論は別であると伝えた。
今後、日高教は概算要求から本予算決定までの間に機会がある限り、教職調整額13%の実現に向けて、各省庁や各県選出議員に要請行動を実施していくという。
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