「全国学力・学習状況調査」の結果から見えること
文部科学省 初等中等教育局 学校情報基盤・教材課長 学校デジタル化プロジェクトチームリーダーの寺島氏は「GIGAスクール構想で開く未来の教育」と題し、講演を行った。まず寺島氏はGIGAスクール構想の「成果」として、「1~2年という短い期間でこれだけの規模の端末を整備し、すべての公立学校にWi-Fiを整えた。これは世界的に見ても非常に優れた環境」と解説する。
その一方、直面する「課題」として「学校や地域間での活用格差」と「ネットワーク環境」の2点を挙げたうえで、「どうしても『1人1台端末』が注目されるが、端末と高速ネットワーク通信がそろって初めてGIGAスクール構想が完成する」と強調した。今年6月に閣議決定された「骨太の方針」にも、「通信ネットワークの着実な改善」「地域間格差の解消に向けた好事例の創出」が明記されている。
寺島氏はここで、7月に発表された令和6年度「全国学力・学習状況調査」の集計結果を紹介した。小学校・中学校ともにICT機器の活用率は年々伸びてきており、端末を持ち帰って利用する学校も増えている。
一方で、ICTの単純な活用頻度と国語や算数・数学といった教科の平均正答率に相関は見られないという。だが、主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善を進め、課題解決に取り組む学習活動をしている学校ほど、そのような学習場面でのICT機器の活用頻度は高く、さらにその両方に取り組んだ学校の児童生徒は、それ以外の学校に比べて各教科の正答率が高いという結果が出ている。
加えて、課題の解決に向けて自分から取り組んだと考える児童生徒ほど、正答率が高い傾向も見られた。
なお、ICTの活用を肯定的にとらえ、有意義なものだと感じている児童生徒ほど、挑戦心・自己有用感・幸福感等に関して肯定的に回答している。また、そのような傾向は特に社会経済的背景(SES)が低いグループ[※]において見られたという。このように、ICTは子どもたちの社会経済的な格差を縮小させる点でも有効だと言える。
これらの結果からわかる通り、主体的・対話的で深い学びの場面でこそ、ICTの活用が重要となる。しかし実際には端末を毎日活用している学校でも、そうした場面での活用率は依然として低い結果が出ており、「使い方に関する格差」が広がることを寺島氏は危惧する。
[※]同調査では、家庭にある本の冊数に関して「0~25冊」「26冊~100冊」「100冊以上」のいずれかでグループを分けている。