登壇者
- 公立はこだて未来大学 システム情報科学部 教授 美馬のゆり氏
- 岐阜聖徳学園大学 DX推進センター長 芳賀高洋氏
- 茨城県教育庁 学校教育部 高校教育課 指導主事 中村圭吾氏
- 茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校 校長 太田垣淳一氏
- 茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校 亀田陽介氏
モデレーター
- 一般社団法人メディア教育研究室 代表理事 今度珠美(いまど たまみ)氏
生成AIの課題について倫理的側面から教育を考える
生成AIの倫理的課題と言ってもさまざまな側面があるが、そのひとつがバイアスの問題だ。AIは膨大な学習データをもとにしてできているため、その学習データが持つバイアス(偏見)も学習されている。生成AIの出力する言葉や絵などにはそれらのバイアスが反映されるため、その情報が例えば人種や性別などに関するバイアスを再生産しかねない。
モデレーターの今度氏は冒頭で、「日本の教育現場での生成AIに関する議論は『いかに生成AIを活用するか』ということや『AIリスクから子どもを守る』『フェイクにだまされないように』などが中心になっている」と指摘。一方、アメリカのデジタル・シティズンシップ教材では、生成AIを扱う際にバイアスについて取り上げていることを紹介した。
そして「人が主体となり倫理的にAIを使用していくために、教育ではどのようなアプローチが可能か」「公正な社会の実現に向け、私たちは社会に対しどのように責任を果たすのか」と、2つの問いを掲げてセッションをスタートした。
茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校が取り組む生成AIの授業
まずは実際に生成AIの倫理的課題を扱った、茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校の授業事例が紹介された。茨城県では2022年度からデジタル・シティズンシップ教育に取り組み、2023年度からは多数の民間企業の協賛による茨城県デジタル・シティズンシップ教育推進事業をスタート。モデル校5校を指定して、幅広くデジタル技術を活用した課題解決活動に取り組んでいる。茨城県教育庁の中村氏は「子どもたちがデジタルの善き使い手、善き担い手になれるよう官民一体となって中高生を支援しています」と話す。
その事業の一環として、指定校ではデジタル・シティズンシップの授業が行われ、竜ヶ崎第一高等学校では、情報の授業で「生成AIが私たちに与える影響」をテーマに、生成AIのバイアスに気づき、考えを深める授業が行われた。今度氏は各校の授業に研修や指導案の作成などで関わっている。