インターネットイニシアティブ(IIJ)は、沖縄県が進めているGIGAスクール構想において、県立学校全85校(県立高等学校、県立特別支援学校、県立中学校を含む)で、1人1台のデジタル情報端末利用(BYOD)による通信量増大に対応できるネットワーク環境を再構築し、2023年11月から本格的に運用を開始した。
同社は文部科学省のGIGAスクール構想に基づき、全国の自治体や教育委員会向けに、安全で快適なネットワーク環境の構築や運用を支援する「IIJ GIGAスクールソリューション」を2022年から提供している。
今回、同ソリューションを通してネットワークの遅延箇所を特定し、帯域保証型の回線や、各学校から特定のクラウドサービスへのインターネットアクセスを分岐させるローカルブレイクアウトを導入することで、ネットワーク全体の最適化を実現している。
沖縄県では、2020年度から県立学校でも学習用デジタル情報端末を配備し、授業でデジタル教材やコラボレーションツールなどの利用を開始した。しかし利用が進むにつれ、当初の想定よりデータ通信量が増加。回線へのアクセスが集中したことによりアプリケーションにログインできない、レスポンスが遅い、などのトラブルが頻発する状態となった。2022年度にはBYOD利用者が増え、さらに通信量が増大する見込みであったため、ネットワーク環境の再整備が喫緊の課題となっていた。
同社では沖縄県の依頼に基づき、2021年度から回線やネットワーク機器を詳細に調査・分析し、通信遅延が発生している箇所や原因を特定した。その結果を踏まえて新たな構成のネットワークを設計し、段階的に移行を進めて2023年11月から本格運用を開始した。
おもな実施内容は以下の通り。
利用状況の分析
「ネットワーク遅延の原因がわからない」という課題を解決するため、実際に学校の授業に立ち会い、利用するアプリケーションや利用方法などをヒアリングすることでインターネットの利用実態を調査した。その上で回線品質の測定および分析を実施し、通信状況を可視化することで、ボトルネック箇所の特定を行った。
帯域保証型回線を導入
遅延原因の切り分けの結果から、各学校からの通信が集中しやすいデータセンター側の回線を、ベストエフォート型(通信速度を保証しない種類の通信サービスの方式)から帯域保証型に切り替えて、ボトルネックポイントを解消した。
各学校から特定のクラウドサービスに直接アクセスするローカルブレイクアウトを導入
授業で利用するGoogle Web会議ツールやMicrosoft Officeアプリケーション、グループウェアなど、特定のクラウドサービスへのアクセスは、各学校から直接インターネットにアクセスする構成(ローカルブレイクアウト)とした。
具体的には「IIJクラウドナビゲーションデータベース」(特定SaaSの宛先情報を自動収集し、IIJの他サービスと連携することでローカルブレイクアウトなどが実現できるクラウド型データベースサービス)を活用し、各学校に当社独自開発のルータ(SEIL)を設置。特定のクラウドサービスへのアクセスと、その他のインターネットアクセスを分岐させている。
特にネットワークを圧迫するビデオ会議の音声や映像通信を各学校で分散させることで、学校側のインターネット回線の構成を変えることなくネットワーク全体の安定化を図った。
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