東京学芸大学と内田洋行は、両者の長年にわたる学校教育のノウハウを融合し、日本の未来の教育の在り方について多面的な連携を推進するため「包括的事業連携協定」を、2月13日に締結した。同日、東京学芸大学附属竹早小学校で記者会見が行われた。
教員養成大学である東京学芸大学は、12の附属学校園を擁し、東日本で唯一となる「教員養成フラッグシップ大学」に2022年に指定されている。また、より良い未来を実現するための教育のあり方を模索、実装していく「OECD日本共同研究プロジェクト」の事務局を2018年から担当。これらの研究成果を国内外の学校に提供していくことに取り組んでいる。
内田洋行はGIGAスクール構想において、全国約133万台の端末やネットワーク環境の構築を進めるなど、幅広く教育ICTビジネスを展開している。1998年に設置した内田洋行教育総合研究所は、文部科学省や総務省等の受託事業や大学との共同研究を通じ、教育現場の課題解決のためのさまざまな活動に取り組んでいる。
このように、学校教育についてさまざまな実績を持つ両者は、教育現場の変化に適切に対応するためその知見を多面的に活用することで、学校教育における先進的な指導方法やICTを活用した新たな学習空間の検討、国際的な教育機関との連携等を内容とする「包括的事業連携協定」を締結することに至った。
包括的事業連携協定の内容は以下の通り。
- 教育や学校教育の在り方に関すること
- 学校教育における効果的・効率的な学習環境の在り方に関すること
- 教員養成・教員研修の在り方に関すること
- 国内外の教育機関、行政機関等との連携に関すること
- その他両者が必要と認める事項
協定の有効期間は2024年2月13日から2027年3月31日まで。成果は日本国内にとどまらず、グローバルに広げて提供していく。
なお、両者のこれまでの主な取り組みとしては、東京学芸大学附属竹早小学校の「SUGOI(すごい)部屋」がある。同教室は内田洋行の教育環境構築ノウハウを活かし、普通教室では体験できない学習活動を実現する空間として、2022年に構築された。
ICTを利活用しやすい空間デザインと稼働性を重視した机や椅子の採用により、場面に応じて即興的にレイアウトを動かすことができ、遠隔授業やグループワークなど、躍動感のある授業を行うことができる。海外の学校と接続した異文化交流の授業や360度カメラでライブ配信された公開授業研究会の実施、先進的な指導方法の検討など、最先端の学習環境を用いたさまざまな研究が行われている。また同年には、竹早中学校にも導入された。
記者会見の中で、内田洋行の代表取締役社長である大久保昇氏は「このSUGOI部屋をベースに、NEXT GIGAに向けて学校での効果的な学習環境の検討を進めていく。また、さまざまな実証を通じて一般的な学習環境での課題を抽出し、教科横断型教育において必要な要素を定義したり、教職課程の学生の実践の場としたりすることを予定している」と説明した。さらには教員の働き方改革の観点から、職員室の環境のあり方についても検討していくという。
今後、両者は将来に向けての教室環境づくりとして、1人1台端末を自由に使いながら、多様な学習活動に対応できる拡張性と、全国の学校に低コストで導入可能な学習空間のモデルの検証を推進していく。
会見後には、東京学芸大学附属竹早小学校の幸阪創平教諭による、SUGOI部屋の機能を紹介するデモンストレーションも行われた。
同教室には壁の一面を覆う形で大きなスクリーンが設置されており、2台のプロジェクターによる2画面表示とワイド画面表示の両方に対応している。幸阪教諭によると探究学習などで出かける前に「Google Earth」で行きたい場所を調べる際、ワイド画面での表示が効果を発揮するという。また、海外の学校とオンラインでつないだ授業では、大きな画面で相手の表情がよく見えてスムーズに交流することができた。
2画面表示が有効な場面としては、病院に入院している児童とつないだオンライン授業の様子を紹介。片方の画面にZoomの画面を投影し、もう片方の画面は教材の投影や板書に活用された。
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