高校の「情報I」とも近い「ITパスポート」
──まずは「ITパスポート」について、どのような資格なのかご紹介いただけますか。
「ITパスポート」とはその名の通り、ITを利活用するために学生や社会人が備えておくべき基礎的な「IT知識の証明書」です。試験内容は、コンピューターやネットワークの仕組みを扱う「テクノロジ系」のほか、経営やビジネスなどの「ストラテジ系」、システム開発やプロジェクトマネジメントなどの「マネジメント系」の3つの領域からそれぞれ出題されます。
国家資格として大学や企業にも認知されており、採用時に参考とされるケースや、入社後の取得が推奨されるケースなどもあって、現在は年間およそ170万人が受験するようになりました。一見「ITの資格」と思われがちですが、実は受験者の8割がIT系でない企業・職業の方々であり、「ITを使いながら仕事をしていくための知識やマインド」を得られるものとご理解いただければと思います。
──デジ連では高校を対象に、ITパスポート試験の過去問題集「全国の高校生対象! ITスキルアップ応援企画」を無料で提供されています。ITパスポートは高校生にとっても重要なのでしょうか。
高校生にITパスポートの過去問題集を提供するのは、「情報I」で学ぶ内容と非常に近い上に、社会人としても必要な知識だからというのが大きな理由です。その上で、実効性のある国家資格という目標は「ITを学ぶ」際の大きなモチベーションになるのではないかと考えました。国家試験に合格することで自己肯定感も高められますし、進学時に役立つだけでなく、社会人になっても活かすことができます。
内容としては、ITパスポートのテクノロジ系が情報Iの内容と近く、「基礎理論」や「アルゴリズムとプログラミング」「コンピュータ構成要素」「システム構成要素」「ソフトウェア」「ハードウェア」などの分野が該当します。また2022年4月の試験からは、「情報デザイン」「情報メディア」分野の問題が追加されましたが、まさにこれらは情報Iでも強化された領域なのです。
またプログラミングについても、ITパスポート、情報Iともに擬似言語が採用されています。つまり情報Iを学校で勉強した生徒が、その知識を活かして「資格を取得しよう、社会に向けて準備しよう、大学へ行くためにもっと能力を深めよう」と考えた際に、ITパスポートの試験が足がかりになるというわけです。
もちろんITの力を活かすためには、さらに上流の「社会・企業でいかに使っていくか」というストラテジ系の考え方や視野が必要で、当然ながらプロジェクトの推進時には「どのような形で進めればよいのか」といったマネジメント系の要素が必要になります。テクノロジ・ストラテジ・マネジメントの3つ領域を総合的に身につけることで、高校の「総合的な探究の時間」でも大いに活かせますし、社会に出た際には有力な道具となります。そうなると、やはり探究学習の場面で体験しながら、並行して試験勉強をするといった手法がもっとも効果的だと考えています。