教育でのICT活用に積極的に取り組み、校内に定着
和光中学校では「共に生きる教育」という学校教育目標を掲げ、学校の中で出会うさまざまな人たちと共に学習し、意見を交わすことの大切さを伝えています。ICT活用状況に関しては、2021年度中学新入生から1人1台体制となり、Chromebookを導入しています。学校の施設としては、高校と共同で利用できるコンピュータ室が3室あり、Macの端末で「Adobe Creative Cloud」を利用できるようになっています。
筆者は、中高6学年のICT教育のとりまとめや、授業でのICT活用の支援を行っており、授業でのAdobe Expressの活用促進をしてきました。2018年度から情報の授業でAdobe Expressの前身であるAdobe Sparkの活用を始め、2019年度からはICT活用に関心の高い教員に個別に声がけをして、授業に取り入れる活動をしてきました。2022年にはワークショップを開催すべく、筆者が学内向けに発行しているメールマガジンを通じて学園全体に呼びかけ、実施しました。
こうした活動を経て、徐々にAdobe Expressの活用が校内で広がってきています。本稿では、古文と音楽の授業で共同活用した事例について取り上げます。この事例では、古文で学んだ枕草子の言葉に合わせた作曲をして、さらにそれを映像で表現しました。
枕草子を読み解くステップは国語で
音楽科の教員である青柳貴宏先生は、当時研究部長をしており、コラボレーションとコミュニケーションを活かした横断授業の展開を研究テーマとしていました。それまでも、社会・英語・音楽でそれぞれ「ブラック・ライブズ・マター」「マーティン・ルーサー・キング牧師のスピーチ」「ブルースの歴史」を授業教材として合わせ、異なる教科と音楽を横断的に学ぶ機会を作ってきました。この活動が生徒、教職員共に好評で、2021年度は中学2年生の古文と組み合わせることになりました。
作品づくりにあたって、まずは国語科の荒井真由美先生が担当する古文の授業で「春はあけぼの」で始まる枕草子の第一段を読み解きました。授業では、荒井先生が最初に現代語訳を示して、清少納言が示す季節観を知り、古典用語の読み方や意味を学びます。さらに、平安時代に生きる清少納言の生活や物の見方で疑問に思ったことについて、図書館司書が提供した文献を参考にしながら各自が図書館で調べ学習をしました。最後に自分たちが調べた内容について発表しました。
調べ学習では、あえてPCを使わず辛抱強く文献にあたりました。文献を調べたことで平安時代の気温や動植物の環境など、思いがけない発見もあったそうです。