東北大学は、学外の論文情報データベースと、学内に蓄積された人事・研究費・教育実績など多種多様なフォーマットのデータをアマゾンウェブサービス(AWS)のクラウドサービスで構築したデータレイクに集約することで、瞬時に評価・分析・可視化を可能にするシステムを開発したことを、3月22日に発表した。
現在、大学は国際的なプレゼンスの向上、若手研究者の登用、多様性と包摂性の促進、産学連携推進といった、さまざまな課題がある。そういった課題に取り組むには、研究者や組織の教育・研究アクティビティを多面的かつエビデンスベースで評価・分析した上での、大学経営戦略へのフィードバックが不可欠となる。
近年、researchmapやKAKENに代表される国内の研究者データベース、ScopusやWeb of Scienceといった海外の論文情報データベースによって、論文数や被引用数、科研費獲得額などは比較的容易に集積・分析できるほか、内閣府エビデンスシステム(e-CSTI)では研究者数あたりの論文被引用数や寄付金額などが、大学・研究機関別に可視化されている。
一方で、大学では秘匿性がある企業との共同研究や論文指導、管理運営業務といった外部データベースに集積しにくい教育・研究活動があり、これまでそれらの実績は研究者が自身の研究時間を割いて、学内のデータベースに入力してきた。しかしながらデータの入力を研究者に依存すると量や質に大きな差があり、エビデンスベースの評価・分析が難しい要因となっている。さらに、大学や研究者に求められる評価基準は固定されたものでなく、学問分野によって異なるほか、時代でも変化することから、入出力データの形式を事前に決めて設計する既存のデータベースでは、これら多面的な評価に迅速に対応できないという課題を抱えていた。
今回、東北大学で行われたシステム開発では、セキュリティ・堅牢性・可用性の観点からAWSのクラウドサービスを基盤として、データレイクを構築している。そこに、学外の論文情報データベース、学内の人事給与統合システム・財務会計システム・学務情報システムなど、さまざまなフォーマットのファイルを投入することで、研究者や評価担当者が必要なときに必要なフォーマットで情報を加工・取り出すことが可能となるほか、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールで可視化することもできる。
東北大学は、同システムを4月から本格稼働させることによって、外部データベースでは集積が難しい企業との共同研究費、論文指導実績、講義担当数、留学生受け入れ実績、管理運営業務などを自動で集積。研究者・研究グループの教育・研究活動の評価が、より多面的かつエビデンスベースになることを期待する。
あわせて、研究者自身の入力が不要になることから、研究時間の確保につながるほか、リアルタイムでこれらアクティビティが可視化されるので、世界と伍する研究大学を目指すための大学経営戦略への迅速なフィードバックも期待されている。
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