豊富なコンテンツを定額料金で視聴できる「Udemy Business」
YIC情報ビジネス専門学校は、山口県の新幹線停車駅である新山口駅前に所在する。1990年に開校した、山口県では最多の学科数を持つ専門学校で、ITやビジネス、医療事務、ホテル・ブライダル、ペットまで幅広い5分野・5学科の学びを提供している。
2021年度からは同校の情報ビジネス科において、オンライン教育プラットフォームの「Udemy Business」を導入し、授業や課題、自学自習の教材として活用している。
副校長である河津氏によると、eラーニング自体は2010年ごろに導入しており、動画教材についても数年前から利用を開始していた。しかし効果的な活用には至らず、苦心していたという。
当時、最大の課題として挙がっていたのが「管理のしにくさ」だ。「動画教材は取り入れやすかったものの、使いたいコンテンツが複数のサイトにバラバラに点在しているため、学生は単元ごとに目当ての動画教材を探す必要があり、教員も学生がどこまで視聴しているのか把握できず、進捗管理が困難でした」と河津氏は振り返る。そのため、学生の進捗はテストなどで個別にチェックする必要があり、非常に手間がかかっていた。
改善策を検討する中で、河津氏はUdemy Businessに出会う。Udemy Businessは必要なテーマの動画教材が1つのサービスにすべてまとまっている使いやすさに加え、費用面でも大きなメリットを感じたという。
「他社サービスの多くはコンテンツを追加する度に費用がかかり、学生・学校ともに負担が大きくなっていました。一方、Udemy Businessは定額料金のみで好きなだけコンテンツを選べる点も、選定のポイントとなりました」
学ぶべき講座がわかる「ラーニングパス」機能
同校では主に3つの目的でUdemy Businessを活用している。
1つ目が、事前にUdemy Businessの動画教材を視聴した上で授業を受けるという、いわゆる「反転学習」としての活用だ。「専門学校に入学する生徒たちのバックボーンは個々に異なっており、普通科高校からの進学者だけでなく、商業科や工業科、通信制の高校出身者や、さらには元社会人もいます。学生の知識量にも差があるため、反転授業として『授業を受ける前提の知識をそろえる』という目的で、Udemy Businessを使って学んでもらっています」と河津氏は話す。
続く2つ目が、夏季休暇などの長期休みや普段の課題として動画教材の視聴を課すというもの。昨年は夏季休暇期間を含む6~7月での視聴が多く、合計で91時間Udemy Businessで学習を行った。
そして3つ目が、学生に裁量を持たせ自学自習としてUdemy Businessの動画教材を視聴するというものだ。コロナ禍により自宅にいる時間が長くなったことで「もっと勉強したい」と学生の学習意欲が高まっているという。しかし実際に学ぼうとすると、意欲はあるものの何をすればよいかわからない学生も多く、学校としても課題を感じていた。さらに「Udemy Businessには6000以上のコンテンツがあるため、どれから視聴すればよいのか悩んでしまう」といった声も寄せられていた。
そこで役に立っているのが「ラーニングパス」機能だ。ラーニングパスを使用することで、Udemy Businessの豊富なコンテンツから任意のものを複数選択してリスト化し、ひとつのコースとしてまとめることができる。同校では現在「eコマース用」「簿記電卓会計用」「PBL用」「ビジネス実戦用」「春休み学習用」「就職活動用」「留学生用」「おすすめ100選」と、目的や課題に沿った8つのコースを教員が作成し、学生に提示している。
配信したラーニングパスの中でも、特に学生からの反響が大きかったのは「eコマース用」に含まれていた「写真撮影講座」だという。同校の情報ビジネス科の特色のひとつに、ヤフーのサポートのもとネットショップを運営できる授業がある。学生はヤフーショッピング内でネットショップを運営し、山口県の特産物や学生の作品などを販売している。
「教科書に沿った基本的な写真の撮り方は学習できていたのですが『もっとお客さんに訴える写真がほしい』など、さらに工夫したい学生も多くいました。しかし、書籍のみでは細かい部分がわかりづらいといった声もあり、その点で動きを確認できる動画はとても役立ったと好評でした。動画を視聴したことで、自分用にデジタル一眼レフカメラを購入した学生もいました」と、河津氏は講座によって学生の興味関心が広がった一例を語った。
ラーニングパスの効果はそれだけではない。数あるコンテンツから目的別にピックアップしたことで、学生は「自分が今何を学ぶべきか」を明確にでき、自学自習も活性化していった。人により多少差はあるものの、視聴時間は最低でも1日2時間、多い学生だと6時間以上学習しているという。「通学に1時間以上かかる学生も多く、その時間を活用して視聴しているようです」と河津氏は解説する。
教員のスキルアップと授業準備軽減にもつながる
Udemy Businessの導入は、教員にとっても多くのメリットをもたらした。そのひとつが、教員自身のスキルアップだ。「コロナ禍の現在は、以前のように東京まで出張してセミナーを受け、新しい知識を習得することも難しいと言えます。しかし、Udemy Businessでは教員も新しい知識を手軽に学ぶことが可能で、自己研鑽のツールとしても活用されています。出張で山口から東京へ行く場合、交通費が片道だけでも2万5000円ほどかかってしまいますが、Udemy Businessであれば同程度の料金で1年間契約することができるのです」と、河津氏はコストパフォーマンスのよさにも触れる。
さらに授業準備の負荷も軽減された。「これまで授業に合った教材を探すためには、複数のサービスをそれぞれ確認しなければならず、時間がかかっていました。現在はUdemy Business内を検索すれば、すぐに適切な動画教材を見つけられるため、肌感覚で5分の1ほどの時間短縮となりました」と河津氏は振り返る。同校では非常勤講師もUdemy Businessを活用しており、「自宅で授業準備が完結する」と好評を得ている。
なお、Udemy Businessの活用について消極的な教員に対しては、河津氏らが一緒に授業を行ってその利便性や活用の幅を見せることで「以前より楽になった」と納得してもらい、学校を挙げて新しいものに取り組めるようになっているという。
Udemy Businessで得た専門知識を地域創生に生かす
Udemy Businessを今後活用したい領域として、河津氏は「Project Based Learning(課題解決型学習、以下PBL)」を挙げる。地元山口県の学生が多く通う同校は「地域の発展に貢献する 地域の皆さんのための教育機関」を目指しており、県内の企業と連携し、企業が抱える課題を解決する授業を行っている。しかし学生にとってなじみのない業種もあり、業界知識の習得は河津氏にとって悩みのひとつだった。
そこで来年度はUdemy Businessを活用し、学生にそれぞれ自分が携わる分野の知識を学んでもらう予定だという。「PBLの授業は少人数のチームに分かれて行うため、一人ひとりが個別に学べるUdemy Businesは最適な教材と言えます」と河津氏は語る。
若い世代はテレビや書籍・雑誌からよりも、YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームで情報を得ることが当たり前になっており、Udemy Businessのような動画教材とは親和性が高い。そこで同校では今後、YICグループが運営するほかの専門学校でもUdemy Businessの活用を広げていくことを計画している。「これまで活用してきた動画教材はIT系が中心でしたが、Udemy Businesには幅広い分野のコンテンツが用意されています。ホテル・ブライダルやペット・動物分野、看護やリハビリ、美容といった分野での活用も検討しています」と河津氏は展望を語った。
地域の課題として、山口県は全国でも高齢者の占める割合が多いことから、世代間のギャップも大きい。河津氏によると、地元の企業や商店は若い世代へのPRに悩んでおり、共に授業を行うことで学生たちの自由な発想から思いがけないアイデアが出てくることもあるという。
「地元で働く若者が減少する中、少しでも地域の可能性を広げていくような活動に、学校としても取り組んでいきたいです」と河津氏が語るように、Udemy Businessで最新の専門分野での知識を身につけた人材が育ち、地域活性化にもつながっていくことが期待される。