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これからの時代に必要な学びは「STEM教育」に詰まっている! 子どもたちが大人になってもイキイキと生きるために

つくることで学ぶ「STEM教育」のはなし 第1回

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 最近メディアで「STEM教育」という言葉を目にする機会が増えてきました。筆者は2014年から小学生向けSTEM教育に取り組んでおり、STEM教育が日本の教育を次のステージへ移行させる最も有効な手段だと考えています。本記事ではSTEM教育になぜ筆者が期待をしているのか、STEM教育の醍醐味とは何か、どのように実践すればいいのかについて、これまで感じたことを中心に紹介していきます。

はじめに

 私は2012年に小学生向け教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業しました。それまでは、大学の教育学部を卒業後、教員にはならず大手とベンチャーの2社に在籍をしていました。

 ベンチャー企業時代に新規事業開発や人事の責任者を担当し、「学校や受験で育む力とベンチャー企業で求められる力のギャップ」を感じました。これが子ども向けの教育会社設立のきっかけになっています。

 創業したといっても当時の私には教育サービスを開発する力はありません。半年ほどかけて国内外の教育サービスを見て回り、その中で「これだ!」と選んだのがSTEM教育です。

 こうしてSTEM教育スクールである「STEMON(ステモン)」が生まれました。しかし、当時はSTEM教育という言葉を知っている人はおらず、会員は4名しか集まりませんでした。

 しかし、現在ステモンの拠点は全国40カ所に増え、入会者の中にはプログラミング教育ではなく「STEM教育で検索をした」という人も増えてきており、注目度の高さがうかがえます。

 また、私は経営の傍ら公立小学校でプログラミング教育にも取り組んできました。必修化決定前の2015年度には、多摩市立愛和小学校でプログラミング教育の授業を実施し、2017年度は小金井市立前原小学校で5年生の理科講師として教壇に立っています。

 何かと批判をされがちな公教育の中へ実際に入ってみると、先生たちの能力の高さや努力に学ぶことがとても多いです。一方で公教育の構造的な問題を知ることもでき、これからの公教育と民間教育の役割を整理することができてきました。

 このように異業種から教育業界に参入して5年ほどが経過しました。本連載はビジネスと民間教育、公教育の3つを経験しているユニークなキャリアを持つ視点から、実践しているSTEM教育について紹介していきます。

そもそもSTEM教育って?

 STEM教育という言葉は「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字をとった4領域の総称です。

 米国で2000年ごろから使われ始めた言葉で、オバマ前大統領が就任後に人材育成の本丸にしたことで一気に認知が広まりました。当時から欧米や東南アジアでは使われている言葉です。

 日本ではSTEM教育よりも「プログラミング教育」が広く認知されていますが、海外ではプログラミング教育という言葉はほぼ使われておらず、「コンピューティング」や「コンピューターサイエンス」と呼ばれています。これらはSTEM教育の一部といえるでしょう。広い領域をカバーする言葉なのです。

 私がSTEM教育で最も素晴らしい活動と思っているものの一つに、ボストンにあるタフツ大学のCEEO(Center for Engineering Education and Outreach)があります。ここは教育学部と工学部が知見を持ち寄り、地域の子どもたちが工学的な考え方を育むための教育を実践しています。教育学部と工学部が共同で教育に取り組む機関は日本にはなく、世界を見渡しても大変珍しい取り組みです。

 以前、タフツ大学の学生がステモンに来て子どもたちにワークショップを開催してくれたことがありました。身近なものを使って楽器を作り、「音は空気がふるえて耳に届く」ことを楽しく学べるイベントでした。

タフツ大学の学生によるワークショップ
タフツ大学の学生によるワークショップ

 日本でのSTEM教育の使われ方は幅広く、ロボットやプログラミング教室からそろばん教室まで、さまざまな事業者がSTEM教育を掲げているようです。

創造力と表現力を育む教育にシフトすべき時代背景

 私は子どもたちに社会に出たあとイキイキと生き続けてほしいと思っています。スティーブ・ジョブズのように世界を変えるのもいいですし、地域に愛されるパン屋さんも素晴らしい。

 「イキイキと生き続けている」状態は次のように定義します。まず、(1)夢中になれる領域を見つけていて、(2)その領域で「作りたい!」「表現したい!」「成し遂げたい!」という目標(アウトプット)に対し、(3)学習(4)チャレンジが繰り返されている。そしてアウトプットしたものが組織やコミュニティの発展に(5)貢献している。それを自分の喜びにつなげまた夢中になる。このサイクルがグルグル回っていること、としています。

 では、この5つのサイクルを回すための力を引き出すには、どのような素養が大切でしょうか? 健康や倫理観といった普遍なものと、時代によって変わるものがあるでしょう。

 例えば日本社会を振り返ると、農耕社会においては一次産業の担い手として体力が重要でした。それが工業化によって体力が機械に置きかわり、読み書き算数が重要になりました。その後コンピューターが担う部分が増え、それらを活用する力が重要になってきました。そして、これからAI社会に移っていくことにより、コンピューターが苦手な「創造」や「表現」の重要性が高まっていくといわれています。

 ここで使っている「創造」とは、製品はもちろん仕組みやカルチャーなども含めた広い意味で「つくる」という意味です。「表現」とは、自分が感じたことや考えたことをなんらかの形にする、という意味で使っています。この2つはAI社会に移行していく中で、人が価値を発揮しながら心も豊かに暮らすために大切な力になるでしょう。

 では、子どもたちの教育環境は創造する力や表現する力を育むシステムになっているでしょうか?

 残念ながら十分とはいえず、集団行動を求められる学校や画一的な評価基準の受験は、創造力や表現力を奪う可能性すらあります。

 こうした状況を補完するために、STEM教育は最も有効な手段だと期待しています。教科にとらわれず、さまざまな知識を組み合わせて子どもたちが自分なりに考えてつくる活動が、STEM教育の魅力を最も発揮する方法だと考えています。「つくることで学ぶ」これがSTEM教育の醍醐味です。


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著者プロフィール

  • 中村 一彰(株式会社ヴィリング)(ナカムラ カズアキ)

     株式会社ヴィリング 代表取締役、小金井市立前原小学校 理科講師。教育学部を卒業後、民間に就職。大手とベンチャーの2社に勤務したのち、小学生向け教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業。  民間学童スイッチスクール(4拠点)、STEM教育スクールSTEMON(35拠点)、探究型学習スクールBOKEN...

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