五感を用いた学びが求められる小学校「生活科」の中で、ほとんどなかった「嗅覚」による体験授業
小学校「生活科」は、児童が商店街に行って社会の仕組みを学んだり、植物を育てて理科の知識を得たりするなど実体験を通して学ぶ授業です。この科目では、五感を用いて自然や生活について学ぶことを重視しています。しかし、教育現場では「嗅覚」についての具体的な取り組みがない点が課題として挙げられていす。そこで、香りのAIシステムによる最先端の技術を使い、香りを言語していく体験を通して、生活科で重視される「見つける、比べる、例える」ことができると期待されます。
今回の実験教室では、まず児童に3つの香り瓶を選んでもらい、香りを嗅いで言葉にしてもらいました。次に、カオリウムを使って同じ香りを言葉にします。AIがたくさんの表現を提示することによって、1つの香りにはさまざまな表現があることや、人によってその感じ方は異なることを体感します。この授業の目的は、嗅覚情報によって見える世界が広がるという現象を学び、それを言葉にすることで感性や表現力を育むことです。また、副次的な効果として、嗅覚情報を言語化したときに個人差が生まれることを知ってもらい、個性を楽しむ心を育むことも狙っています。
感性情報処理の初期セッティング――人それぞれ違う「正解のない香りを言語化すること」がもたらす気づき
実際に体験した児童は「あまり香りのこと考えたことなかったけど、どういう香りかを考えるのが楽しかった」「花のにおいだと思っていたのに、本当は木のにおいだとわかってびっくりした」「香りを言葉にするのは、最初は難しかったけれど、だんだん慣れてきたから、もっとほかの香りでもやってみたい」「香りは一緒だけど、自分の香りの感じ方と、他の人の感じ方が違うのがよくわかった」と、同じ香りでも、人それぞれ「あっさり」「静か」「クリア」「スーッとする」など、感じ方の違いに驚いていました。中には「今日は植物の香りだったけど、マスカットやキャベツ、パンケーキでも言葉にしてみたい」と、好奇心が刺激されて、授業後のおやつで試している児童もいました。
今回の講師を担当したリバネスの伊地知聡氏は「今回は、自分と友だちは感じ方が違うこと、違いを受け入れることに重点を置いて実施しました。テクノロジーが発展する未来に向けて感受性を養う次世代教育が求められる中、五感の中でも扱われづらかった『嗅覚』によるカリキュラムは、小学校高学年向けに総合学習の時間でも取り入れることができると思います。香りを言葉にすることは、大人でもあまり経験してきていません。だからこそ、子どものころから初期セッティングすることで、広がる可能性を追求していきたいと考えています。学校からのフィードバックをもらいながら、実際の教育現場のニーズに合わせて向上させていきたいです」とコメントしています。